日韓摩擦、米ハイテク大手の供給網にダブルパンチPhoto:Chung Sung-Jun/gettyimages

 【ソウル】世界有数のハイテク製品輸出国である日本と韓国の貿易摩擦を受け、シリコンバレーのハイテク企業団体は、摩擦激化が世界のサプライチェーン(供給網)に長期的な打撃を及ぼしかねないと警鐘を鳴らしている。

 米中の対立が逆風となる中、米国のハイテク企業や半導体メーカー、製造業者が加入する企業団体は相次ぎ日韓に書簡を送り、世界のサプライチェーンは部品や化学品、原材料の効率的な納入に依存していると訴えている。日本と韓国で生産される半導体やディスプレーは、アップル、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトなどが提供するサービスやハイテク機器に不可欠なものとなっている。

 日韓政府の対立がもたらした今回のサプライチェーンの混乱は、利益よりも政治的な要因が背景となっている。日本は今月に入り、韓国が世界の主要供給元となっているメモリーチップや携帯ディスプレーの製造に欠かせない3種の化学製品について、輸出規制を強化した。

 日本はさらに、早ければ来週にも韓国向けの約1000品目に輸出規制を広げることを検討している。実質的に韓国向けの全輸出品を対象とするものだ。両国は今週、ワシントンと世界貿易機関(WTO)で議論しているものの、早期の解決を見込む向きはほとんどない。

 米企業団体は書簡で、「不透明で一方的な輸出管理方針の変更は、サプライチェーンの混乱や輸送遅延を引き起こしかねず、外国で操業する企業とその従業員にも長期的な打撃を及ぼす恐れがある」と指摘した。

 在韓米国商工会議所(AMCHAM)は25日、「経済への打撃を最小限に抑える」ため公平な和解をまとめるよう日韓に強く促し、長引く対立は「世界的に負の影響をもたらす」と述べた。

 世界のサプライチェーンには一段と国家主義の壁が立ちはだかり、ハイテク製造業の相互依存関係がスマートフォンやコンピューターなどの生産にとっていかに弱点となっているかを浮き彫りにしている。

 エコノミストや業界アナリストによると、韓国での生産遅延はたとえ数週間であっても、アップルのiPhone(アイフォーン)販売やアマゾンのクラウドコンピューティングのデータサービス、さまざまなコネクテッド機器の在庫を脅かす可能性がある。

 米国にとってアジアで最も密接かつ繁栄している同盟国である日韓の摩擦と並行して、対中摩擦も長引いている。複数の米ハイテク企業トップは22日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への輸出制限緩和を議論するためドナルド・トランプ大統領と面会した。

 S&Pグローバル・レーティングのアジア太平洋地域チーフエコノミスト、ショーン・ローチ氏は「ハイテク業界のサプライチェーンの政治問題化は重大な脅威」だと指摘。「5年前にはこのような事態への対応を迫られることはなかった。これまでは経済的な視点からビジネスに関する判断を下していたが、今や政治も考慮に入れなければならなくなった」と述べた。

 日本政府は7月4日、輸出規制の強化に踏み切った。背景には日本の韓国統治時代から続く両国の葛藤がある。日本は折りたたみスマホに使われるフッ化ポリイミド、レジスト(感光材)、高純度フッ化水素の輸出を制限している。

 アナリストらは、サプライチェーンが混乱を来しているかまだ分からないとしている。だが、一部を前倒しで調達した韓国企業は、1カ月から3カ月分とみられる在庫を食いつぶしつつあるという。

 生産遅延を回避できるかは、サムスン電子やLGエレクトロニクスが代替サプライヤーを確保できるかに掛かってくる。サムスンとLGからコメントは得られていない。

 米ハイテク企業関係者は先週、サムスンとの会議のため韓国を訪問し、日本の貿易措置を受けた市場環境について聴き取りをした。

 トランプ政権は今のところ、日韓の緊張緩和に向けた積極的な関与は控えている。トランプ大統領は先週、仲介の可能性を示唆したが、あくまで「両国が求めるのであれば」と述べていた。

 ゴールドマン・サックスの22日付リポートによると、日本が検討中の輸出制限は、韓国が日本から輸入している約520億ドル相当の品目ほぼ全てに一時的な混乱を及ぼす可能性がある。韓国の輸入のうち、日本製品は昨年約11%を占めていた。

(The Wall Street Journal/Timothy W. Martin)