米のドル売り介入、くすぶるシナリオPhoto:Reuters

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ幅は、ドナルド・トランプ大統領がそうあるべきだと考える水準を下回りそうだが、大統領には景気刺激のために使える道具が他にもある。ドル売り介入だ。

 投資家はそれに備えておくべきだ。

 来週の連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の25ベーシスポイント引き下げが決まりそうだ。最近の景気動向を見ると、それが必要かどうかは定かでないが、トランプ氏はより大幅な利下げを望んでいるようだ。そうなればドル安の可能性がある。

 トランプ氏は22日に再びFRBを批判し、「わが国は他国より『大幅に』高い金利の支払いを不必要に強いられている。非常に見当違いのFRBが唯一の原因だ」とツイート。「他国が自国通貨を操作し、資金供給している。極めて不公平だ!」と付け加えた。

 同氏が金融政策をドルに関連付けたのは今回が初めてではない。ドルは貿易加重ベースの通貨バスケットに対して過去5年に25%上昇している。トランプ氏は今月、中国と欧州が「大きな為替操作ゲームをしており、米国と競うために自らのシステムに資金供給している」とツイートした。欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が6月に新たな刺激策の可能性を示唆した後には、トランプ氏はドラギ氏が米国との「通貨戦争」を始めたと信じているとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えた。

 トランプ氏は声高に訴えているため、ウォール街のエコノミストやストラテジストは同氏が為替市場に介入する可能性についても言及してきた。実際には、介入しない公算の方が大きいと考えているのだとしてもだ。

 トランプ氏がドル安誘導のためのドル売りを実行したいのなら、できる。ゴールドマン・サックスによると、財務省には介入に充てられる資金が750億ドル近くある。FRBが参加すれば、2倍以上になるかもしれない。FRBは為替介入のメリットについて意見が分かれた時でさえそうしたように加勢するだろうと、UBSのエコノミストらは指摘している。

 介入は効果的なのだろうが、しない理由はいくつもある。そもそも、長期的な効果はないかもしれない。為替市場は1日に数兆ドルが動く巨大な市場であり、相場を左右する要因は金利以外に複数ある。貿易の動向や相対的な物価、さまざまな景気の軌道などだ。

 これまで介入が成功したのは、極端な状況下で他国と協調した時だった。米国の直近の為替介入は日本、カナダ、英国、欧州との協調介入で、東日本大震災からの日本の復興を脅かしていた円高に歯止めをかけることが狙いだった。いま米国が介入するなら、単独介入になるだろう。

 ただ、介入はほぼ象徴的なものでしかなく、前例を破ることになるからといって、そうならないという意味ではない。

(The Wall Street Journal/Justin Lahart)