民主党も自民党も顔が立つ
絶妙な勢力数の「離党議員」

 小沢一郎元民主党代表と同氏に近いとされる衆参両院の議員が、合計50名、民主党に対して離党届を提出した。彼らは、今後、新党を結成するものと見られる。

 この動きとその雰囲気には既視感がある。「新党」は、プロレスや落語などの「新団体」のようでもあるし、一般の企業でも、社内の一部の勢力が大勢の社員を引き連れて「新会社」をつくることがある。見所は、既存の団体・会社と新団体・会社が、どの程度の対立あるいは協調関係になるのかだ。

 この新党は、衆院では第3位の勢力(38人)を持つが、連携が有力視される他の会派の所属議員と一緒になっても50人であり、内閣不信任案を単独で提出可能な51人に届かないと報道されている。

 また、先般の衆院において消費税率引き上げ法案に反対票を投じた民主党議員は57名に及び、彼らを全員最も重い処分の「除籍」とすると、民主党は衆院で少数与党に転落する。

 離党届が先手になったことで、「反対投票&離党届提出」の議員と、単に「反対投票」の議員との間に差を付けやすくなったことは、造反議員の処分に苦慮していた民主党執行部には、良い助け舟になったのではないか。造反への重い処分と「小沢切り」が果たされることで、自民党の顔も立つ。離党の人数とタイミングは、絶妙だった。

 今後、「政局」に関心が向く中で、消費税率引き上げ法案成立に必要な程度の期間、国会の均衡が大きくは狂わない道筋ができた。政策的には、「消費税率は引き上げ、年金改革の先送りを含めて社会保障は大筋現状維持で変わらない」とほぼ決まったように見える。後の問題は、新聞が大好きな「政局」だ。

 今後、政局的に興味深いのは、民主党の代表選、自民党の総裁選と次の解散との時間的な関係だろう。これは、次の首相が誰になるかに大きく関わる。