なぜ「本」ではなくて、「論文集」なのか……? 『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(星海社新書)や『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社、共著)など、多くのベストセラーを次々送り出すライターの古賀史健さんが、『SHIFT:イノベーションの作法』について多くの人が感じる疑問を、著者の濱口秀司さん自身にぶつけてみてくれました。

古賀史健(こが・ふみたけ)さん
『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(星海社新書)、『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社、共著)など多くのベストセラーを手がける。

 ライターとは因果な商売である。誰もが訊きたがっているものの、恥ずかしくていまさら訊けない初歩の初歩について、臆面もなく質問をぶつけていくことを託された職業。それがライターだ。

 「そんなこともわからないんですか」。

 やさしくクールな濱口さんに、そう馬鹿にされてもかまわない。別に取材でもなんでもないプライベートの場で、なかば職業病のようにぼくは訊いた。

「濱口さん、今回の『SHIFT:イノベーションの作法』。なぜ濱口さんはあれを“本”だと呼ばせず、あくまでも“論文集”なのだと何度も念押ししているんですか?」

 濱口さんの答えは、きわめてシンプルなものだった。

 「ぼくは自分の考えを、ことばだけで伝えられるとは思っていません。ことばだけのコミュニケーションでは誤解しか生まないとさえ、思っています。だから、ぼくが本を出版するなんて、百害あって一利なしなのです。誤解をバラ撒くようなものですからね。でも、出版社の方から説得を受けるうちに、それが“論文”だったらかまわない、と思えるところまできました。この『SHIFT』は、読者への作用を目的とした“本”ではなく、自分の考えをまとめただけの“論文集”です。だから本当は販売する必要もないんだけど、印税全額を寄付することにして、折り合いをつけました」

 ことばを疑い、本というメディアを疑い、自分自身のことまで疑い、そのすべてを突破する解を導き出す。『SHIFT:イノベーションの作法』は、まさに濱口秀司さんの在りかたそのものといえる一冊だ。

 ……ということで濱口さん、また馬鹿な質問、たくさんさせてくださいね。