読み手が持つべきは、解決したい課題と、世を良くしたいというパッションだけ……!? 「人と地球を健康にする」というスローガンのもと、ミドリムシ(学名ユーグレナ)の培養技術をもとに、健康食品や化粧品の開発、バイオ燃料の研究を進めるユーグレナ。この8月には、いっそう未来に目を向けていこうと、「18歳以下のCFO(最高未来責任者)」を募集する新聞全面広告を出して話題にもなりました。同社の副社長であり、日本最大級の技術系ベンチャーキャピタルであるリアルテックファンドの代表も務める永田暁彦さんは、濱口秀司さん著『SHIFT:イノベーションの作法』をどのように読んでくださったのでしょうか。

永田暁彦
株式会社ユーグレナ副社長

 人は、イノベーションという言葉が好きだ。イノベーティブな企業、仕組み、機械、組織。

 しかし、多くの人がイノベーションを誤解している。「イノベーション」とは、発想の奇抜さやユニークさだけではない。社会に実装され、正のインパクトを与えているからこそ、人々は共感し尊敬する。

 そういう意味で、本書は誰も思いついていないあっと驚くアイデアを導き出すための手引きではない。社会を変える本当のイノベーションを、世の中に実装するための本だ。

 しかも、それがある特定の能力を持った人ができるように書いたものでもない。立場によるものでもない。個人の力だけではなく、チームでも実現できるようにまで寄り添っている。

 優しすぎる!!

 確かに、濱口さんに初めてお会いした時の印象は、世界的イノベーターと対峙する緊張感を超える優しさだった。

 しかし、それは性格だけの話ではない。

 話をしていて気づいたことは、思考を完全なまでに因数分解すると結果的に優しいものになるということだ。世にあふれる小難しい表現と、フレームワークで「分かる人には分かる」という“頭が良いっぽい”コミュニケーションとは違う。

 複合的な課題の抽出、背反しがちな重複する課題の解決方法、ロジカルな意思決定権者に不確実なイノベーションを意思決定させる方法、組織全体を動かす方法、社会へ浸透させる方法……と、実際にイノベーションが社会に実装されるまでの方法が、具体的に再現性のある形で記載されている。

 本を通じて、本の向こうにいる優しい濱口さんが、イノベーションの発生から社会実装まで寄り添ってくれる。

 これは、優しい人が優しさを感じさせるほど思考を因数分解した、優しい本。
読み手が持つべきは、解決したい課題と、「世を良くしたい」というパッションだけでいい。あとは、この本を携えれば。

 本書の描く世界の行きつく先は、イノベーションのコモディティ化であり、特異性は情熱と好奇心だけになるのかもしれない。