世界に指名される三重の工業薬品会社、「オンリーワン品質」の秘密江南化工の製品出荷風景。化学工業薬品の分野で、世界中の企業から引き合いがくる「オンリーワン」の高品質をなぜ実現できるのか

国内外シェアは90%以上
出荷量の半分が海外向け

 一般の人々がほとんど目にすることはないが、工業製品の製造に欠くことのできない材料が化学工業薬品である。三重県四日市市に本社を置く江南化工は、特定の工業薬品では世界的なシェアを誇り、国内外のメーカーが同社の製品を指名して購入するほど高い評価を得ている。同社の2代目社長である大谷淨治(67歳)は、こう語る。

「物質としては一般的なものなのですが、用途上、求められる品質をクリアできるメーカーは他にほとんどありません。顧客の化学メーカーが他国への技術供与などでプラントをつくるとき、当社を推奨してくれるので、そのたびに海外への輸出が増えてきました」

 同社が生産する工業薬品の出荷量の約50%、売り上げでは約40%が海外向けであり、アメリカ、ヨーロッパ、南アフリカ、東南アジア、中国、台湾など10ヵ国の企業と直接貿易を行っている。一部、日本の商社を経由するケースもあるが、貿易の9割が直接取引だ。

 主要な工業薬品は、創業後間もない1959年から生産している「パラトルエンスルホン酸」で、様々な用途の調合薬、触媒、硬化剤として使われており、用途先は液体合成洗剤、高級シャンプー、塗料、接着剤、樹脂製品、医薬品と、挙げればきりがない。

「パラクレゾール」「パラエチルフェノール」はゴム、プラスチックなどに使われる酸化防止剤である「BHT」(ジブチルヒドロキシトルエン)の原料となる。また、半導体製造に使われるフォトレジスト(回路を作る感光性材料)や液晶などの電子材料にも利用されている。

 パラトルエンスルホン酸、パラクレゾール、パラエチルフェノールともに同社が初めて国産化し、国内外のシェアは90%以上、パラエチルフェノールなどシェア100%という製品も少なくない。