この夏休みを利用して、アルバイトに精を出している学生も多いのではないだろうか。学生時代のアルバイトは、働くことを通じで社会を知るよいチャンスだが、同時に働くうえでの労働者の権利についても、この時期から知っておきたいもの。その1つが、仕事中に病気やケガをしたときの「労働者災害補償保険(労災保険)」だ。
日常生活で医療を受ける場合、私たちは健康保険を利用する。だが、健康保険は「業務外」の理由で、病気やケガをしたときの治療費を給付することを目的としている。「業務中」、つまり仕事によるケガや病気の治療費は給付の対象外だ。健康保険証を出しても、健康保険は使えないので、一時的とはいえ、患者が医療費を全額自己負担しなければいけなくなってしまうのだ。
仕事中や通勤中の病気やケガについては、「労災保険」の手続きをとる必要があることを覚えておきたい。
アルバイトも日雇いも
労災はすべての労働者が対象
労働基準法では、業務中に発生した労働者のケガや病気、死亡などに対しては、たとえ会社に過失がなくても一定の補償をすることを義務づけている。だが、会社に支払い能力がなかったり、損害額が高額になったりすると、十分な補償ができない可能性がある。
そこで、作られたのが労災保険だ。労働者が仕事中や通勤途中に災害(労働災害)にあって、ケガや病気をした場合に、治療費や休業中の所得保障などを会社に変わって補償してくれるのだ。保険料は全額事業主の負担で、業種ごとに保険料率が決まっている。
従業員を1人でも雇っていれば、事業所(事業を行う施設で、私的な企業だけではなく、自治体や公益財団などの事業も含まれる)には、労災保険に加入することが義務づけられている。ときどき「うちみたいな小さな店は、アルバイトしかいないから労災なんて関係ない」という経営者に遭遇することがあるが、それは堂々たる違法行為だ。
正社員のほか、パートタイマー、嘱託職員など、すべての労働者が労災保険の適用対象になる。雇用形態に関係なく、労働者なら誰でも対象になるので、当然のことながらが、アルバイトや日雇いも補償を受けられる。たとえ不法滞在している外国人労働者でも、業務中の病気やケガには労災保険が適用されることになっている。