エネルギー生産設備Photo:Reuters

 米国から輸出されるシェールガスの量は、かつてない高水準に達している。しかし苦境にある国内の天然ガス生産者にとっては残念なことに、世界の天然ガス価格はかつてない低水準に落ち込んでいる。

 欧州とアジアの天然ガス相場は、需要減や米中貿易紛争、欧州の貯蔵施設の潤沢な在庫を背景に、今年は過去最低水準まで急落している。ただ価格を押し下げている最大の要因は、世界市場に流れ込んでいる米国産ガスだ。

 「これは不可避だった」。S&Pグローバル・プラッツの世界ガス・電力市場分析部門トップを務めるアイラ・ジョセフ氏はこう語る。「一度に市場に流れ込む供給量が単に多過ぎるということだ」

 価格下落によって、米国の安価なガスを液化して輸出することの魅力が一部失われた。米国外の価格は通常、国内と比べてかなり高い。

 こうした状況は、探査や生産を行う企業にとって頭痛の種だ。安価なシェールガスを大量に市場に供給してきた各社は、すでに株価の低迷といら立つ株主に悩まされている。国際価格が低下すればするほど、輸出向けに液化天然ガス(LNG)を生産する沿岸施設のガス需要が減る可能性が高くなる。今年の国内天然ガス価格が完全に崩壊せずにこられたのは、こうした需要のおかげでもある。