香港のビルPhoto:Reuters

 価格高騰を続ける香港の不動産市場が変調をきたしている。米中貿易摩擦の激化や世界経済の成長鈍化に加え、反政府デモが圧力となっているためだ。

 香港の大手不動産会社の株価は過去2カ月に値下がりし、注目の再開発地域における一等地の売却案件もとん挫した。住宅価格もやや下がっており、これまで何年にもわたり上昇基調にあった住宅価格が今年、横ばいになるとの予想も一部で出ている。

 貿易摩擦や世界経済の減速は、香港以外の世界主要都市でも商業用不動産価格の重しとなっている。だが、香港経済での不動産の役割は極めて大きく、香港株式市場にとって不動産業界は最重要セクターの一つだ。

 長江実業集団(CKアセット・ホールディングス)、恒基兆業地産(ヘンダーソン・ランド・ディベロップメント)、新世界発展(ニューワールド・ディベロップメント)、新鴻基地産発展(サンフンカイ・プロパティーズ)の不動産大手4社の時価総額は、8月26日までの1カ月間に合計160億米ドル(約1兆7000億円)超が吹き飛んだ。不動産大手は、ショッピングモールやホテル、オフィスビルへの投資を手掛ける地主でもあり、複数の経路から市況低迷の影響を受けやすい。

 九龍倉置業地産投資(ワーフ・リアルエステート・インベストメント)のスティーブン・ウン会長は今月、香港は貿易摩擦とデモ隊と警官隊の衝突という「最悪の事態」によって打撃を受けている、とメディアに語っている。同社の旗艦ショッピングモールである時代廣場(タイムズ・スクエア )と海港城(ハーバーシティー)の売上高は落ち込んでいるという。