「白血病は、増悪と完解を繰り返す病気です。私が研修医時代に担当した患者さんは、13回目の再発でした。抗がん剤は、病的な白血球だけでなく、血小板や赤血球なども減らしてしまうので、笑うたびに唇の端が切れ、出血していました。血小板がないので血が止まらないのです。でも、それでも、朝の採血に行くとニコニコ笑ってくれる。中年の女性でした。

 採血するのも大変でした。長年の頻回の採血で血管がつぶれていて、採血するのに何度も失敗しました。駆け出しで、下手くそだったんです。痛かったと思いますが、彼女は『先生、何回でも刺していいよ』と手をさしのべて、採血させてくれました。

 私は半年間、ほぼ病院に泊まり込みの状態で治療し、何とか寛解に持ち込み、退院にこぎ着けることができました。

 この患者さんのおかげで、私は採血が上達しましたし、また、諦めないことを学びました」

 医師と患者の信頼関係の大切さも、患者から学んだ。

「これも研修医として駆け出しの時代ですが、ある冠動脈スパズムの入院患者さんを担当したときのことです。スパズムは明け方に起こりやすく、昼過ぎからは起こらなくなります。私はその方の午前と午後の運動能力の違いを調べたり、さらに薬の効果を見るために、全部で24回の運動負荷テストをさせていただきました。大変な負担をおかけしたと思います。

 でも一度も文句を言われることなく、快く付き合ってもらえました。非常にありがたかったです。

 私はこれらの患者さんたちに、一人前の臨床医として育てていただいたと思っています」

 患者からは、世界をリードし続ける研究・開発の原動力ももらっているという。