水噴射を採用しているエンジン
BMW・M4GTSに搭載
いま、ガソリンエンジン開発の現場では水噴射という技術が注目されている。空気と燃料だけでなく、水を混ぜて燃やす方法だ。通常、ガソリンエンジンの混合気は空気とガソリンを重量比で14.7対1という割合で混ぜる。これは理論空燃比と呼ばれ、この割合で燃やすと空気中に含まれる酸素を使いきる。ここに水を噴射するのだが、燃費向上とノッキング防止という効果が確認されている。
現在、市販車で水噴射を採用しているエンジンは世界にただ1基、BMW・M4GTSに搭載されている直列6気筒3リットルだ。気筒内に燃料を直接噴射する直噴ターボエンジンに水噴射システムを追加して、最高出力は317kWから368kWへと約16%、最大トルクは550Nmから600Nmへと、約9%、それぞれ向上している。水噴射システムはロバート・ボッシュが開発し、専用の水タンクに蒸留水を入れて使う。
水噴射は、専用のインジェクターによって吸気ポート内で行われる。エンジンの熱で温まった吸気ポートに水を噴射すると、水の分子が周囲の熱を瞬時に受け取って蒸気になる。そのため空気の温度が下がる。いわゆる気化潜熱だ。そして空気の温度が下がることでシリンダー内に入る空気量が増え、充填効率が向上する仕組みだ。