英語で失敗しない非ネイティブはいない。
たくさん失敗して英語力を身につける
グローバルな仕事環境では、失敗は歓迎されます。仕事の目的は、より優れた成果を生み出すことです。「失敗していない」ということは、「何も挑戦していなかった」と考えられてしまうのです。
実際私は、アクセンチュア時代にマネジャーとして初めて採用面接を行った際、当時の上司から「今までの失敗経験の有無を確認するように」とアドバイスを受けました。そして、「失敗したことも、つらく困難な経験もない人は必ず落とすように」とも言われました。
アクセンチュアだけではなく、デロイト コンサルティング、マイクロソフトにおいても、同じようなアドバイスを受けました。つまり、グローバル企業では、失敗は誰にでも起こり得るものなので、新しいことに果敢に挑戦した経験、特に失敗の原因を追究し次につながるように貪欲に学んでいく、「Growth Mindset」(成長思考)を兼ね備えた人間が求められているのです。
変化が激しく、先が見えない世界でビジネスを行う必要があるからこそ、グローバル社会では「Growth Mindset」が最も大切なことだと考えられています。
私も実際、たくさんの失敗をしてきました。シンガポールで仕事を始めた当初は、英語がうまく聞き取れず、外国人たちとうまくコミュニケーションも取れず、落ち込んだことがありました。しかし、こうした経験があるからこそ、今では世界中のどんな人とでもコミュニケーションが取れるようになりました。
そして、前職のデロイト コンサルティングでは「1年2ヵ月間売上ゼロ」を経験しました。当時、シンガポールをベースにアジア全域で日系企業のトップマネジメント層への営業をしていました。通常はパートナーやディレクターと呼ばれるベテランたちが行うコンサル営業を、30代前半で挑戦できる喜びで、血沸き肉躍る思いだったことを記憶しています。ところがフタを開けてみると小さな案件の一つも取れませんでした。
あまりの肩身の狭さに、皆がシンガポールからマレーシアのクアラルンプールまで飛行機で移動する際、ただ一人、長距離バスで営業先を訪問したこともありました。
私はすっかり自信をなくし、自慢のリーゼントも心なしか低くなり、自律神経失調症の症状まで出ていました。原因不明の頭痛に悩まされ、人前に出るとろれつが回らなくなる始末で、このまま社会人として働けなくなるかもしれないという恐怖に怯えていました。
自分で言うのもなんですが、ありとあらゆる失敗をしてきたと思います。そのおかげか今では、外国人しかいない部署で、シンガポールをベースに、日本・オーストラリア・韓国・ニュージーランドのライセンス監査業務の責任者を務めています。
挫折しながらも、あきらめずに努力し成功体験を重ねていけば、ある日突然大きく成長することが必ずでき、失敗を恐れなくなるはずです。
英語で仕事をすることも同じです。実際このような精神を、私は20年以上にわたる仕事のなかで習得してきました。今ではネイティブの部下を従え、ネイティブの顧客に対して、私が主体になって、難しい交渉を担うようになったのです。グローバルな環境で英語の壁に何度もぶつかってきましたが、海外でも働き続けられる英語力が身についたのです。
英語を学んでいくことは、未知の世界を開拓することに近いと思います。知らないことに挑戦したときに、失敗はつきものです。私もいまだに英語で失敗することがあります。それほど奥深いものなのです。
私たち非ネイティブにとって、英語で失敗するのは当然のことです。失敗すると恥ずかしくて心が折れそうになりますが、そんなことを気にせずにたくさん失敗してください。