結局、徴用工問題と同様に懸案となっている、日本による韓国向け輸出管理規制措置の強化や日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)延長問題については、最後まで触れられることはなかった。

 会談後、韓国側は文大統領の親書に、「日本は北東アジアの平和のための重要なパートナー」「韓日両国の懸案を早期に解決するよう努力しよう」という内容が含まれていたことを明らかにし、関係改善の取り組みを続ける意欲を持っていることを改めて強調した。

 李首相は会談結果に大いに満足したという。

 日韓の関係改善の一歩を踏み出したという確信からだったのか、あるいは次の大統領選に向け、「日韓関係改善のために努力した政治家」というイメージ作りに成功したことへの満足感だったのかは、定かではない。

「進歩派の論理」修正
「八方ふさがり」の打開図る

 首相官邸周辺によれば、安倍首相は周囲に対し、「問題なのは韓国ではなく、文在寅政権だ」と語っているという。

 それほどまでに、文大統領との個人的な信頼関係は破綻している。

 ただ、韓国側の関係修復の動きは、文大統領が、「ネロナンブル(他人がやれば不倫だが、自分がやればロマンスという意味で、自己中心主義を指す造語)」とやゆされてきた硬直した政治路線から脱却しようとする変化の表れでもある。

 きっかけは10月3日、ソウル中心部で40万人以上が参加したとされる「反文在寅集会」だった。腹心の曺国法相の数々の疑惑噴出を機に、政権への批判が強まっていることへの危機感がある。

 文氏は7日、大統領府の幹部会議で、「国民の多様な声を厳粛な気持ちで聞いた」と発言。14日には、曺国法相は辞任した。

 曺国氏は、自身のフェイスブックに日本企業に韓国人元徴用工らへの賠償を命じた大法院判決について、「(判決を)否定や非難、歪曲する人は親日派(売国奴の意味)と呼ぶべきだ」と投稿。自身の政治姿勢を、過去の抗日独立運動などに重ね合わせた。

 文政権は、曺氏の動きに代表されるように、「(進歩・左派)陣営の論理」を過度に重視する政権と言われてきた。

 すなわち、南北融和を図り、米韓同盟への過度な依存を嫌い、歴史認識問題では日本の責任を追及するという、進歩・左派の主張をそのまま政策として取り入れてきた。

 逆に、保守・右派や彼らが頼りにしてきた日米の主張は原則的に無視してきた。