孫正義,ソフトバンクBloomberg/gettyimages

ソフトバンクグループ傘下で「ヤフー」を運営するZホールディングスが、メッセージアプリ運営大手のLINEと経営統合に向けた交渉中であることが明らかとなった。そこでダイヤモンド編集部では、緊急特集「孫正義『300年帝国』構想の秘密」を全3回でお届けする。社長室に配属されて孫正義を最も近い位置から支えてきた3人の元参謀。彼らが垣間見たのは、ローマ帝国から織田信長まで、歴史から学んだ知恵で未来を読み解こうとする孫の貪欲な姿だ。(敬称略)

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「週刊ダイヤモンド」2017年9月30日号の第1特集を基に再編集。肩書や数字など情報は雑誌掲載時のもの

孫正義流の経営計画策定は
「30年先」を見通す

「縦軸の目盛りが1兆円単位じゃないグラフは持ってくるな」

 パナソニックの傘下入りが決まった三洋電機から転職してきたばかりの鎌谷賢之は、孫正義の指示に面食らった。2009年のことだ。兆円単位のグラフを作成する機会などそうそうない。ただ、鎌谷が当時従事していた仕事を考えると、納得できる。

 鎌谷は入社数カ月ながら、「新30年ビジョン」を検討するチームのリーダーを任されていたのだ。最初に与えられた課題は、30年後のコンピューターチップの性能はどれほど進化しているか。探るのははるか遠い未来。当然、金額も大きくなるというわけだ。

 今は孫から離れ、RIZAPグループの経営戦略を担う鎌谷は、「大きく捉えることを孫さんから教えられた」と語り、その経験は急成長を遂げるRIZAPでも生きているという。

 30年先を見通すなど、普通の上場企業では考えられない長さの経営計画だ。しかし、実はそれすらも、孫が目標とする「300年帝国」の青写真にすぎない。