カリスマ社長後継争いの全貌
Photo by Reiji Murai

 カリスマ経営者が築いた「帝国」を誰が引き継ぐのか――。かねて「60代で後継者に会社を継承する」と公言してきたソフトバンクグループ(SBG)創業者の孫正義会長兼社長は8月11日で62歳の誕生日を迎えた。

 孫氏は19歳のときに「人生50ヵ年計画」と称して「20代で事業を起こし、30代で軍資金を1000億円ためて、40代でひと勝負し、50代で事業を完成させ、60代で後継者に引き継ぐ」というライププランを打ち立てている。

 60歳になる直前の2017年5月に10兆円規模の資金で運用を開始した「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は、間もなく2号ファンドの運用が始まる。合計20兆円規模のビジョン・ファンドを通じ、世界中の人工知能(AI)関連企業に投資してグループを形成する「群戦略」の事業が完成すれば、このグループを誰が引き継ぐのかという課題が重みを増してくる。

 後継者候補とされるのは、マルセロ・クラウレ氏(48歳)、ラジーブ・ミスラ氏(57歳)、佐護勝紀氏(51歳)の副社長3人である。かつて孫氏が後継者として名指ししていたニケシュ・アローラ氏が16年6月に突如退任してからしばらくは後継候補が不在だった。18年6月の株主総会で3人が同時に副社長に選任されて新たな後継者レースが始まり、静かな三つどもえの神経戦が続いている。

 ボリビア人実業家のクラウレ氏は副社長・最高執行責任者(COO)。米スプリントや英アーム、米ボストンダイナミクスなどSBG傘下の海外企業を統括するソフトバンクグループインターナショナル(SBGI)の最高経営責任者(CEO)でもある。海外事業を一手に統括している点で、かつてアローラ氏が副社長として担っていた役割に近い。

 インド出身のミスラ氏は、ソフトバンクが手掛けた旧ボーダフォン・ジャパン買収の際の資金調達を担当して孫氏と親密になり、14年にソフトバンク入りした。

 当初は「金融戦略担当」という肩書を与えられながら、翌15年からソフトバンクに入社したアローラ氏とは馬が合わずに傍流にいたが、アローラ氏が退職して以降に帝国での勢力を広げてきた。

 16年のビジョン・ファンドの立ち上げ時にはプロジェクトの責任者となり、サウジアラビアのムハンマド皇太子と孫氏との会談を橋渡しするなど資金調達に奔走した。現在は、同ファンドの運用を担うSBインベストメント・アドバイザーズ(SBIA)のCEOとしての地位を固め、孫氏との距離が最も近い幹部だ。

 ゴールドマン・サックス証券出身の佐護氏は、ゆうちょ銀行副社長を経て18年にSBG副社長・最高戦略責任者(CSO)に抜てきされた。

 CSOが具体的に何をするのかは不明のままだが、佐護氏は今年1月にリアルアセット投資部を新設し、ゴールドマンでゴルフ場投資などを手掛けた木本啓紀氏を招いて部長に据えた。また、5月1日付でCSO室を設置し、同じくゴールドマンから招いた長尾至氏を室長にして体制を整えている。

 クラウレ氏とミスラ氏は、それぞれSBGで実績を積んで副社長にのし上がったが、佐護氏は外部から副社長に就任し、まだ目立った実績はない。今のところ後継レースで存在感があるとは言い難く、他の2人の副社長の一騎打ち状態となっている。

 実は、この2人の間には確執がある。