「平均」にダマされるな

出口　人間はみんな顔が違うので、人生も一人ひとり違って当たり前です。
　ですから、75億人分の人生があるという答え以外ないですよね。
　でも、日本では「平均」とか「普通」とかという言葉がよく使われます。
　僕は平均も普通もないと思っています。
　数学の試験の平均点はあります。
　でも、人間は全部グラデーションで並んでいるので、背の高い順に並べれば、75億人、順に並ぶわけです。
　体重の重い順に並べれば、75億人、それぞれ並ぶ。
　100メートル走の速い順に並べたら、ウサイン・ボルトを筆頭に75億人が並びます。
　人は脳が発達しているので、抽象化が好きです。
「日本人の特性」などといいたがる人がいますが、そんなものはありません。
　テレビなどで、日本人の強みを真剣に話したりしている学者を見ると、この人、大丈夫かなと思ってしまいます。
　強みは弱みの裏返しで同じものですし、また日本人といっても、室町時代の日本人と今の日本人はまったく違います。
　時代や地域を超えた人なんていない。
　それが「ファクト」ですよね。

――ありがとうございます。

出口　よろしければ、『哲学と宗教全史』の今までのバックナンバーもご覧ください。