ジェレミー・ハイマンズ(左)とヘンリー・ティムズ

20世紀は、大手企業や政府などが権力を持つ「オールドパワー」の時代だったが、テクノロジーの発展の結果、いまや大組織がパワーを溜めこむことは不可能となった。これからは、「クラウドファンディング」「サブスクリプション」「コミュニティ」がキーワードになる「ニューパワー」の時代だ――。
世界に起こっているそうしたパワーの変化とその影響を鮮やかに読み解き、米ニューヨーク・タイムズ紙、英フィナンシャル・タイムズ紙など各国メディアで絶賛されている書籍が『NEW POWER これからの世界の『新しい力』を手に入れろ』だ。
著者は、ハーバード大、マッキンゼー、オックスフォード大などを経て、現在はニューヨークから世界中に21世紀型ムーブメントを展開しているジェレミー・ハイマンズと、約100ヵ国を巻き込み、1億ドル以上の資金収集に成功したムーブメントの仕掛け人であり、スタンフォード大でも活躍するヘンリー・ティムズ。
著者らは、いま起きているパワーシフトを、「プレイヤーの役割の限定された『テトリス思考』」から、「プレイヤーたちが協力しあって大きなものをつくれる『マインクラフト思考』」への変化として説明する。本書ではそうした新しい時代におけるパワーのつかみ方、権力や影響力の生み方、使い方について、まったく新しい考え方を紹介している。
以下、ニューヨークで行われた著者インタビューより、特別にハイライトを掲載したい(『Voice』 2019年8月号掲載「オールドパワー対ニューパワー」より一部を編集・抜粋。取材・構成=大野和基)。

「オールドパワー」と「ニューパワー」の違いとは?

―――お二人がいうオールドパワーとニューパワーの違いを説明してもらえますか。同じインターネットによるサービスでも、どちらの価値観に基づいて運営するかによって、従業員や顧客、あるいは社会に与える影響がだいぶ異なっているようです。

ヘンリー・ティムズ(以下、ティムズ):オールドパワーの世界はトップダウンの世界です。命令を出され、ある特定の方法でその命令をこなし、組織はリズミカルに機能します。誰もが他の誰かによる機会で果たすべき、非常に小さな役割を担っている。

 一方、ニューパワーの世界は人びとがすべてつながっており、その人たちが果たすべきより大きな役割を与えられています。

 たとえば、ユーチューブの場合、人に映像制作者としての役割を与えます。ニューパワーが機能しているのは、人にこれまでよりも大きくて、クリエイティブな役割を与える方法を考え出しているからです。

ジェレミー・ハイマンズ(以下、ハイマンズ):重要なことは、ニューパワーはたんなる一連のツールではなく、マインドセット(思考様式)であるということです。方法論とマインドセットの両方がないと、うまくいかないということを強調したい。

 あなたがオールドパワー式で経営されている日本の大企業にいるとしましょう。忠誠心に重点が置かれ、厳格なヒエラルキー組織になっている会社です。そのような組織でオールドパワーの価値観にはまったままでは、ニューパワー・モデルの動き方をすることはできません。

テトリス思考から、マイクラ思考へ

 本書の初めに、ゲームの「テトリス」と「マインクラフト」のアナロジー(類比)を使いました。

 テトリスでは、スクリーンの上部から落ちてくるブロックを、プレイヤーは、直線に並べて消去していく。これと同じで、オールドパワーの世界観では、プレイヤーの役割は限定されており、システムに従うだけです。

 しかし、いまの子どもたちがマインクラフトというルールのない世界で体験しているマインドセットは、他の人と協力しながら規模が大きいものをつくれるというものです。これは、日本の学校で教えられるマインドセットとはかなり異なっている。日本人のマインドセットは周囲に合わせて行動するというもので、主体性は限られています。

 ただ現在では、主体的に組織に関わっていくやり方やマインドセットは、日本企業や従業員のあいだでも起きています。そうした変化は日本を含む世界中で起きているのです。