スマートフォンを掲げる人々Photo:Reuters

 今年6月、対話アプリでつながった数十万人が香港市内を占拠した。中国政府によって市民生活が脅かされるのを阻止しようと立ち上がった若者たちだ。

 それから4カ月余りが過ぎ、反政府デモは世界10カ国以上に拡大した。チリやボリビア、レバノン、スペインなど、数百万人の市民がデモに参加。平和的なものもあるが、その多くが暴徒化している。

 数千人が負傷し、多数の死者も出ている。デモ隊は道路や空港を封鎖し、自分たちの激しい怒りの矛先が向いている機関に攻撃を加えている。

 イランは16日、インターネットを遮断。全土に広がるデモを鎮圧するため武力行使に踏み切った。中南米では大規模デモが拡散しており、その波は5カ国目となるコロンビアも飲み込んだ。

 世界に飛び火するデモを線でつなぎ、関連づけることは不可能だ。だが、数多くの地域で市民が蜂起しているという事実(その多くは戦術やスローガンまで共有している)は、「アラブの春」や1968年の学生デモなど過去の抗議活動を踏襲しながら、新たな社会運動の輪郭を形成している。

 デモの直接の発端は国ごとに異なる。だが、その根底には社会や経済に対する似たような不満があり、既存の政治秩序に対する変革要求をあおる構図となっている。

 スペイン北東部カタルーニャ自治州では、分離・独立を求める活動家らに禁錮刑が言い渡されたことでデモが発生。経済的に裕福なカタルーニャ市民の多くは、自らが納めた税金の多くが他の貧しい州へと渡っていることに怒りを募らせている。

 抗議活動が発生している都市の多くは、所得格差が大きい。デモで中心的な役割を果たしている若者の多くは、両親と同水準の豊かさが得られるのか疑問を抱えながら生きている。彼らの怒りの矛先は政界のエリートたちへ向けられている。市民の感覚とはかけ離れ、自分たちや同じような身分にある者にしか仕えないエリートたちのことだ。