懸命に就職活動を重ねる吉田さんのもとに、不採用通知ばかり届く日々が1年近くも続いた。
Photo by Yoshiko Miwa
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 面接で問題になることは、いつも同じだった。まず、最近の数ヵ月は職歴が空白になっている。生活保護を受給しているからであるが、それが問題になる。また、

「今まで何をしていましたか?」

 と経歴を聞かれるのだが、転職回数が多いことが問題になる。場合によっては、40歳を超えている年齢も問題となる。そして、結局は不採用となってしまう。

 ハローワークの再就職講座も受講した。しかし、主な内容は、もともと正社員だったが不況で失業した人のための再就職ノウハウだった。吉田さんのような経歴の持ち主の再就職に適した内容ではない。個別対応をしてほしいところだが、そのための体制は充分ではない。吉田さんは「行き間違えた」と感じた。めげることなく、散歩で体力を落とさないように注意し、ボランティアに行ってフリーマーケットの運営の手伝いをしたりしながら、「仕事をする」という感覚を維持した。

 その間も、就職活動は続けていた。面接では、

「今後の方針をある程度決めて、『これがしたい』『これができます』と話すんですけど、相手からは自分で考えているのと違う厳しさを話されるんです」

 という感じで、なかなか再就職成功には結びつかない。しかし、そこから気づきを得て、次の面接では同じ失敗をしないように注意した。吉田さんは

「気を付かせてもらえたところもありました」

 と感謝している。

ボランティアへの参加は、仕事がなかった時期の吉田さんにとって、社会とのつながりを取りもどす貴重な機会だった。でも、生活保護受給者への義務化には、吉田さんは反対だ。
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 また、資格を何1つ持っていないという問題にも直面した。そこで、ポリッシャーの講習を受け、その実績を履歴書に書けるようにした。吉田さんによれば、清掃の資格は、

「多少は、持っていないよりは良いこともある」

 という。今後も、清掃に関する資格取得は続けようと考えている。

 数ヵ月後、吉田さんは、ハローワークで就職先を探すのをやめた。無料の求人情報誌に、就職できる可能性の高い求人情報が掲載されているのではないかと考えたのだった。吉田さんの読みは正しく、清掃会社に正社員としての雇用を得ることができた。

 ハローワークで紹介を受けることができるのは、労働法などの法規を順守する前提の求人ばかりである。だから、労災保険料は当然ながら支払われる。正社員待遇であれば、社会保険料などの法定内福利厚生も完備が原則である。万一、求人情報と実際の待遇に差異があったら、ハローワークに相談すれば、是正される可能性がある。

 無料の求人情報誌に掲載されている求人も、あからさまに労働法に違反していることは多くない。しかし、実際に雇用された後で「労災保険料が支払われていない」「『社保完』と書いてあったが、社会保険料は実際には支払われていない」「掲載されていた給料が手取りではなく税込だった」といった問題が明らかになることは少なくない。ハローワークで見つけることのできる悪条件の求人より、さらに悪条件なのだ。

 吉田さんは、約1年間にわたる自分の就職活動を振り返ってこう語る。

「最初、こんなに時間がかかると思っていなかったんですよ。短い時間でなんとかなると思っていたんです。でも、見つかる仕事は、日雇いやバイトばかりなんです。それでは今までと同じ事の繰り返しだから、正社員の仕事を探しました。でも、正社員として働くためには技術が必要です。自分で『すぐに働ける』と思っても、働けるところはないんですね。何回か面接を受けてみて気がついたんですが」