SNSでいくらでも人とつながることができるとはいえ、孤独感に悩まされる人は老若男女問わず多いだろう。そこで、今回はコミュニケーション戦略の専門家であり、著書『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)がある岡本純子氏と、ノンフィクションライターで、著書『超孤独死社会――特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)がある菅野久美子氏に、現代社会に潜む孤独の問題について語ってもらった。(清談社 福田晃広)
孤独に危機感を持つ
20~30代の若者たち
岡本 私も菅野さんも、あらゆる媒体で孤独のデメリットや孤独死に関する記事を書いています。読者の反応で多いのは「孤独の何が悪い!」みたいなコメント。いわゆる炎上も珍しくない。孤独の問題は、非常にデリケートなテーマなんですよね。
菅野 私は主に孤独死をテーマに記事を書いていますが、それでも岡本さんのケースと同じ反応が多いです。そのような孤独肯定派は年配の人に多い印象がありますね。最近の若い人は「将来、自分も孤独死してしまうんじゃないか」という発言が割と多いんです。
岡本 そうなんですよね。意外と思われるかもしれないですけど、20代、30代の若い人のほうが孤独や孤独死について危機意識がある。取材に来てくれる人も若い人ばかりですし。
菅野 私は、事故物件の取材をきっかけに孤独死の実態を目の当たりにし、「もしかしたら自分もこうなるかもしれない」という問題意識から、取材を始めました。なので、若い人のそのような意見はすごく共感できますね。
岡本 最初に言っておかないといけないのは、孤独にも「選択的孤独」と「絶対的孤独」の2種類があるということ。これは明確に区別しなければなりません。前者は、簡単にいえば、たまには独りになりたいという誰にでもある感情で、これは否定しません。
問題なのは後者で、これはたとえば、何か困ったときがあったときに頼りにできる人が誰もいない状況を指します。断言してもいいと思いますが、孤独を肯定的に捉えている人たちは、この区別をせず、一緒くたにしている。しかも「孤独を恐れるな」などと呼びかける著名人の多くは、いざというときに頼れる人やよりどころのような自分の居場所が絶対あるはずです。
菅野 同感です。別に極端な話をしているわけではなくて、病気やリストラなど、一歩踏み外してしまえば誰でも孤独に陥ってしまう可能性が今の日本にはあるんですよね。しかも、働き方の問題も大きい。正社員ではなく、派遣社員の場合だったら、プライベートに限らず会社内ですら、人と人との関係性を築くことが難しいことが多いですよね。なので、決して本人が望んだけわけではなく、その人が置かれた環境によって年齢性別関係なく、常に孤独状態という人も増えていると思われます。