引きこもりの人の就労を後押しする
「ユニバーサル就労」とは?

 実は、引きこもりを含めて「働きづらさ」に悩んでいる人に手を差し伸べ、就労への階段を後押しする事業が成果を上げている。それが「ユニバーサル就労」である。

ユニバーサル就労で働くAさんユニバーサル就労で働くAさん。夕食時にはショートステイ利用者に配膳する

 千葉県佐倉市にある介護保険のショートステイサービス。夕食時になると、スタッフのAさん(42)が利用者の食事を食卓にそろえ始める。厨房から運ばれた小皿やお椀などを利用者ごとに一つ一つ分けて、食卓まで持っていく。配膳の後、下膳にも入る。

 Aさんはこの直前まで、利用者の居室と風呂の掃除をしていた。介護補助という役割の仕事である。午前中は、同じ建物内の訪問介護事業所でヘルパーの訪問予定表をパソコンで打ち出した。

 この事業所では、Aさんの仕事を「ユニバーサル就労」と呼ぶ。ユニバーサルとは「普遍的、すべての人々の」という意味。「働きたいけど働きづらい」悩みを抱えた「誰も」が働けるような仕組みのことである。

 ユニバーサル・デザインという言葉は浸透している。障害者をはじめ、誰もが使いやすい生活用品や交通機関、建築などを指す。働く場でも同様に、誰でも働くことが出来るような仕組みを作ろう、という発想から生まれた。

 障害者手帳があれば、障害者雇用や福祉的就労である就労継続支援A型や同B型などの作業所へのレールが現行制度でもある程度敷かれており、仕事への道筋がある。

 障害者向けの「福祉的就労」と多くの企業の「一般就労」との狭間にある就労形態を「ユニバーサル就労」としている。このようにユニバーサル就労を位置付け、かつ実践しているのが社会福祉法人「生活クラブ・風の村」(池田徹理事長)である。生協の「生活クラブ生活協同組合千葉」(本部・千葉市)を母体とし、千葉県内で高齢者介護や障害、保育など80カ所近くの事業所を運営しており、佐倉市の事業所もその一つ。

 Aさんは、大学でゼミなどの共同研究についていけなくなり、中退。両親の家で10年ほど引きこもり状態だった。心配した母親が同法人を訪ねて相談し、Aさんは8年前から同法人でユニバーサル就労に入っている。

 最低賃金など労働法規の基準を満たす雇用型就労だが、4年前までは事務や掃除などの軽作業による非雇用型の有償ボランティア活動だった。「風の村」グループでユニバーサル就労を担当するNPO法人「ユニバーサル就労ネットワークちば」は、今後のAさんについて「一般就労への道を後押ししたい。介護資格を取得するか、あるいは得意なパソコン操作を生かしての転職かを話し合っていきたい」と将来設計を模索中だ。

「風の村」の佐倉東保育園に3年前から勤務するBさん(28)もユニバーサル就労である。親からのネグレクト(育児放棄)が続き、中学校で不登校に。電車に乗るなど社会的な活動ができない適応障害のため仕事に就けなかったが、障害者手帳は持っていない。