リーバイスのジーンズを作る中国・中山市の工場リーバイスのジーンズを作る中国・中山市の工場 Photo:Gilles Sabrie/The Wall Street Journal

 中国はこの10年ですっかり大国になり、世界の秩序を揺るがしてきた。中国の台頭は以前から予想されていたにもかかわらず反発を招いている。

 2010年代の初め、中国の存在感は主に経済力に表れていた。中国経済はすさまじい勢いで拡大し、日本を追い抜いて世界2位の規模となった。中国企業は国外進出を開始し、資源と市場を確保するとともに、国内で拡大する中間所得層の自動車・旅行・ぜいたく品への需要に応えるようになった。高速鉄道網などの国内の野心的な開発プロジェクトは、未来の大国を象徴しているように見えた。

 2010年代序盤に指導部の世代交代で習近平国家主席が権力を握ってからは、中国は国際情勢に関わる消極的姿勢を捨て去り、以前よりずっと大国らしく振る舞い始めた。国外初の軍事拠点を設け、国連平和維持軍に戦闘部隊を派遣し、世界各地で港湾や道路などのインフラ建設計画を推進。これらを含む多様なプロジェクトの資金を調達するために新たな開発銀行を創設した。習氏の野望は共産党の計画にも見て取れる。米国を追い抜き、中国の利益に資する新しい世界秩序において中心的役割を奪い取ることを目指しているのだ。

 中国が影響力を拡大し、その影響力を行使する姿勢を強める中で、国内外で反発が強まっている。特に米国は中国を破壊的勢力と位置付け、複雑に絡み合った経済関係の崩壊につながりかねない貿易戦争を誘発した。活力にあふれた香港では、中国政府の行き過ぎた介入に対する懸念が反政府抗議行動を活発化させた。西側諸国の政策専門家らは、中国をルールに基づく国際規範に従わせることができるのか、そもそも中国にルールに従う意思はあったのかについて、頭を悩ましている。

「米国の政策専門家は、中国が平和的に、あるいは容易にリベラルな国際秩序の一員になるという誤解と幻想を抱いていた」。ジョージア工科大学の国際問題専門家であるフェイリン・ワン氏はこう語る。同氏自身も以前は誤解していたと認める。それは、中国の独裁的システムが国内の自由化に抵抗し、国外の自由化を阻害することを理解していなかったことが一因だという。

 国内での経済的成功と国外での存在感の高まりは、指導者らの自信を強めてきた。中国が正しい道を進んでおり、経済や社会への介入をいとわない独裁的システムが成果を生むという自信だ。世論調査によれば、多くの国民も同様に考えている。習主席は、世界は中国から学ぶべきだと言う。

 習氏は2016年、共産党員の会合で、「人類にとってより良い社会システムを目指す上で、(中国国民は)中国型ソリューションを提供することに十分自信を持っている」と述べた。

 中国は何十年にもわたり、米国を模範でないにしてもガイド役とみなしてきたが、現在は自国をリーダーだと考えている。この変化は2010年代に入る前から始まっていた。米国から波及した世界的な金融危機に見舞われた時、中国は工場や建設会社の活動を維持するため矢継ぎ早に景気刺激策を実施した。中国の首相は2009年の国際会合で、米国が金融危機を引き起こしたと非難した。