『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します。
悪質クレーマーに対する最終的な2つの選択肢とは?
私が提唱する「超共感法」は、クレームを申し立てるお客さまの気持ちを代弁する言葉を投げかけ、お客さまから「そうなんだよ」「そうなんです」といったYES言葉を引き出し、こちらを「敵」ではなく「味方」と認識してもらうことで、スムーズに解決に導くものです。YES言葉を引き出した時点で、お客さまの怒りはほぼ解消されます。
一般のクレームはどんなに怒りが激しかったり、要求がエスカレートしていたりしても、その根底には「自分の困り事の解決」が目的としてあります。そのため、超共感法により怒りを解消することで、解決に導くことができます。
しかし、相手が悪質クレーマーの場合、そもそもの目的が「金品」や「誹謗中傷などによる自己満足」です。何かに困っていてクレームを申し立てているわけではないため、妥協点や合意点を探しても無駄です。基本的には、次の2つの対応しかありません。
解決策➀ 交渉を打ち切る
解決を断念して、交渉を打ち切ります。以下を参考に、はっきりと告げてください。
「お話は承りました。残念ながら、当方ではご要望にお答えできません。これでお話し合いを打ち切らせていただきます」
「当方でできる対応はさせていただきました。これ以上のご要望にはお応えできません。今後、お客さまの行動により、当方に損害が出た場合には法的処置を取らせていただきます」
また、担当スタッフを「クビにしろ」などと、本来、社外の人間が立ち入るべきでない領域に踏み込んだ要求をされた場合も、「私どもの会社では、人事は社内の規則に基づいて行なうよう決められております」と毅然とした態度で断ります。
解決策② そのまま放置する
「放っておいたら連絡が来なくなった」というケースは珍しくありません。悪質クレーマーからしてみれば、あきらめて、ほかのクレームに力を注いだほうが効率的なのでしょう。
解決策①の「交渉を打ち切る」との違いは、要望に応えられないことだけを伝える点です。短時間で話を終わらせ、後は放っておきます。また連絡があれば、同じ対応を続けます。
それでもなお理不尽な要求が続くときは、法務部や弁護士など法律に詳しいプロの手にゆだねます。もちろん、明らかな脅迫や暴行を受けたときは、迷わず警察に通報します。
以上のように、悪質クレーマーには現場の担当者だけでは、対抗し切れないことが少なくありません。相手の言いなりになって問題をこじらせることのないよう、さまざまなシーンを想定してルールやフレームをつくっておき、例外をつくらずに対応することが大切です。
逆に悪質クレーマーに対して絶対に行なってはならないのは、前例を作ってしまうことです。2014年9月東京都足立区の飲食店で、執拗にクレームを受け、自腹でお金を渡していた店長が対応に悩み、相手を刺し殺す事件がありました。悪質クレーマーの正体は普通の会社員だったと報道されています。解決しようとしてお金を渡したことで、余計に深みにはまってしまったのでしょう。
悪質クレーマーが登場したら、一人で抱え込まず、早めに上司や法律の専門家に相談するようにしましょう。