百々 それ以来、ずっと思っていました。
だから、リベラルアーツの根本原理を説く『哲学と宗教全史』は絶対に広める意義があると思っていたのです。
僕にとってある種、大好物な本でした。読んでいるうちに、これは「A5版のハードカバー」であるべき風格の本だと思えてきたんです。そうじゃないといけないなと。

――なるほど。

百々 本の完成形がすでに見えていました。

――初めて大阪・中津でお会いして「本体価格2400円」という話が出てきたときはびっくりしました。

百々 そうでしたね。

――あれは書店歴30年という長年の経験からの“ひらめき”ですか?

百々 そうですね。

――でも、A5版ハードカバーで本体価格2400円の教養書のベストセラーってあります?

百々 ないんじゃないですか(笑)。

――ないんじゃないですかって、そんな無責任なこといわないでくださいよ(笑)。

百々 だってロングセラーだから、いつかはコスト回収できるでしょう。

――価格は1200円の本の倍。

百々 僕は絶対ロングセラーになると思ったから、正直、値段はいくらでもいいと思っていた。

――そうだったんですか。僕は100円刻みで悩みに悩みましたよ。

『サピエンス全史』以上の衝撃!日本人の哲学と宗教へのコンプレックスは、最高潮に達している!今も積みあがる『哲学と宗教全史』タワーのゲラ跡

百々 ただ、これまで出口さんを知らない人にも、これまでのファンの方にもぜひこの本を知ってほしかった。その絶妙なラインが2400円だったのかもしれませんね。
ただ、寺田さんも、他ならぬ日本一の教養人・出口さんにあんなゲラを託されたら、編集者として全力でやらなくちゃいけない。編集って面白い仕事ですよね。

――おっしゃるとおりです。今回の原稿は、質・量ともに圧倒されました。僕のデスクの後ろには、未だにあのときのゲラが積み上がっています。
あの時の戦場の記憶を脳の片隅に残しておこうと思っているからです。

続きは次回お願いします。
これまでの『哲学と宗教全史』の連載ダイジェストはこちらをご覧いただければと思います。