公開後の映画口コミも、「ふつうの人が努力して成功する姿は華強北のストーリーそのものだ」「普通の人がスタートアップを起こして奮闘することで自分たちの人生を変えるというストーリーは人を元気づける」という評価が多いようだった。

急変貌を遂げていながら
映像が残っていない街

 深センは住民のほとんどが中国各地から、仕事のために出稼ぎでたどりついた人たちで構成されている。彼らはやがて地元に帰る人々で構成されているため、文化を育むには向かない地だ。深センにも映像制作会社は多くあり、クラウドファンディングのビデオを撮ることや結婚式、企業の宣伝映像などを撮影しているが、この街に映画会社があり、劇場映画を撮影しているのを見たのは今回が初めてだ。

 この記事を書くためにコンタクトした「福田区影視教育中心」に、「他に深センや華強北を舞台にした映像はないか」と尋ねたところ、14年に公開された「解読 華強北」が推薦されてきた。14年はスマホ決済もシェアリング自転車もなかった、深センの時間感覚でいえば大昔だ。

 逆に言うと、これだけ大変化を続ける深センは、海外のニュース映像にはたびたび取り上げられるにもかかわらず、ほとんど中国国内での公式映像に残っていない都市でもある。僕が知る限り、前述の「解読 華強北」の他、18年に動画サイトのiQiyiが「我乃城」シリーズの第4話として深センを取りあげているが、その2本ぐらい。成都や北京は、食事などの文化を含めて多くの映像作品が撮られているが、深センはほとんど記録されていない街でもある。

 深センでも10日ほどで公開が終わり、近隣の東莞市や広州市でも公開されていないこの「創客兄弟」だが、2018~19年の深センを映像で収めた映画は貴重だ。何とか日本でも公開されることを望む。