
高須正和
AI(人工知能)というと「機械が人間より賢くなり、人間の業務が機械に置き換えられる」というシンギュラリティーが話題になるが、現在のAIはもっと実務的な発展をしている。中国・深センでは数千円で使えるAI開発環境が続々登場し、技術の大衆化を推進しているのだ。

いま、世界的にクラフトビールのブームが起き、ユーモアとDIY精神に満ちたクラフトビールの小ブルワリーが多くの街にできている。中国も例外ではなく、若手の経営するブルワリーが、多くの都市で個性のあるクラフトビアを醸造している。その中で「深セン愛醸生物科技」というブルワリーは、深セン流のOEMビジネスをビールで展開している。

第25回
コピーの街からイノベーションの街を目指す深セン。ついに世界最大の電気街「華強北」を舞台にした、ハードウェアスタートアップの映画「創客兄弟」が公開された。映画は深セン市福田区が全面バックアップした、プロパガンダ映画ともいえるものだ。そこには深センの歴史と、現在の問題意識が凝縮されている。

第24回
半導体の集積度が18ヵ月ごとに倍増することで、プロセッサやメモリ等半導体製品の価格低下・性能向上をもたらす「ムーアの法則」。電子機器の製品開発でも、専用のマイコン設計を必要とした少品種大ロット生産から、汎用のマイコンチップにソフト面で差別化する多品種少量に時代は変わってきている。製品分解と半導体から見える製品の背景とは。

第23回
腐敗や不公正、そして何より非効率が支配していた中国の行政サービスは、テクノロジーのおかげで急速に向上している。「スマートガバメント」の言葉通り、賢くなっているのだ。かつてはスマートの反対で、どうにも間抜けで頼りにならなかった行政サービスだが、ネットワークに繋がったカメラなどのIoT端末が効率を上げ、人々の振る舞いも変えつつある。

第22回
急速な経済発展により、中国はもはや人件費の安さは武器にならなくなった。世界から製造業の投資が集中した深センは、その蓄積を目当てに研究者を引きつける場所になっている。北京の清華大学や米国のマサチューセッツ工科大(MIT)などの研究者が深センのリソースを生かして研究開発を進めようとしている。

第23回
2018年の5月、わずか半年前に「中国経済は共産党がすべてコントロールしている」という誤解でレポートした深セン・蛇口の改革開放博物館が10月にリニューアルされた。リニューアルの直後に習近平国家主席が蛇口を訪れているが、最高権力者に忖度したのか、改革開放博物館の内容が党の指導を前面に押し出したものに変わっていた。

第20回
世界各国の政府が「自国のシリコンバレー」を口にするように、中国政府もいくつも「第2の深セン」を狙ったプロジェクトを仕掛けている。最近では北京郊外の雄安新区に「千年の大計」として大規模開発を行っている。雄安新区は未来の深センとなれるか。

第19回
中小の多彩な製造業が得意分野を融通し合いながら淘汰/洗練を繰り返してきた深センの製造エコシステムは、世界有数の大企業や大学を巻き込んで、イノベーションのためのエコシステムを構築しつつある。

第18回
深セン市の人件費、家賃はますます高騰し、製造業は労働者の確保が難しくなり、移転する会社も出てきた。今も世界中の製造業が集積し、珠江デルタが「世界の工場」となっていることが、深センから多くのハードウエア企業が誕生するきっかけとなったが、製造業はいつまで深センにとどまるのか。

第17回
世界最大の家電見本市CES(アメリカ・ラスベガス)で深セン企業の存在感は非常に大きく、昨年は652社が出展した。一方で実際に深センを訪れてもそれらの製品を効率的に見られるわけではない。深セン市政府と業界団体は、「中国国際消費展示電子交易中心(CEEC)」という巨大展示会場を建設した。が、役所が声を掛ければなんでもうまくいくとは限らない。

第16回
共産党独裁の中国においては、「経済をすべて国がコントロールしている」と考えている日本人は多いが、共産党のビジネスが上手なわけではない。1980年代から深センでは徹底的な規制緩和が行われ、野心的な起業家がビジネスを大きくして、政府はそれを追認し後押しする立場にあった。深センで最初に開かれた土地である蛇口に新しくオープンした「改革開放博物館」はそれを伝えてくれる。

第15回
世界最大の電気街、深センの華強北に変化が現れている。路面店の1Fに、ショッピングモールに入っていてもおかしくないようなブランド品の店舗が現れるようになり、その数は今も増え続けている。下請けで技術を蓄積し、インターネットマーケティングを行い、自社ブランドで勝負する会社が増えてきている。

第14回
派手なプレスリリースで注目される深センの自動運転バス。世界一流の技術が投入されているものの、実用化の具体的な目処が立つような状態ではない。プレスリリース先行のようにも見えるが、大規模な実験を繰り返すことは発展のために必要だ。深センはそういう実験のための都市でもある。

第13回
かつて深センの人々は、必死で下請けの組み立てをして豊かな生活を目指していた。それがこの10年で物価も生活スタイルも別世界のように上がり、人々の意識もハングリー精神からクリエイティブとイノベーションを目指すように変わった。ハイレベルの教育を受けて、視野もグローバルに広がった世代が、この街を担っている。その変化の背景を、深センの投資家シャン・リュウ氏に聞いた。

第12回
深センには多くのVR製品・VRコンテンツ開発企業が存在し、ショッピングモールや書店などでVRゲームセンターを日常的に見かける。いくつか体験した限りではすぐ「VR酔い」を起こして気持ち悪くなる低品質なものが多いが、新規開発は相変わらず盛んである。はたしてドローンやロボットのように、VRでも深センから何かが生まれるだろうか。

第11回
「低コストの労働力を提供する国」から抜け出しつつある中国・深センは、ほかにないアイデア・製品を生み出すことを求められている。オリジナルのアイデアを「世界の工場」深センで製品化するために世界から集まった才能との交流で刺激された若者達が、政府を巻き込んで巨大なムーブメントを作りつつある。

第10回
工場が郊外に移転し、金融やサービスの都市となった深セン中心部。ビジネススタートアップタウンとして2015年に突然誕生した南山軟件産業基地では、イノベーションや起業といった言葉を冠したカフェが立ち並び、Macbook片手の若者が起業の夢を語っている。

第9回
現代化とほぼ同時にインターネットが普及し、いわば「明治維新と高度成長が同時に来た」ような混沌状態にある中国。とりわけ深センは、イノベーションの格好の実験場といえる。レガシーのないところに最新技術が普及することで起こる社会変革について、急速に普及する自転車シェアリングサービスを通じて考えてみたい。

第8回
共産主義革命→文化大革命→改革開放と社会のルールが激しく変化し、さらに現代化とほぼ同時にインターネットが普及した中国は、「明治維新と高度成長が同時に来た」といわれる混沌とした状態にある。深センはその実験場として、レガシーのないところに最新技術が普及することで、サイバーな社会を見ることができる。
