カルロス・ゴーン
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 カルロス・ゴーンは拘置所と制限住居で14カ月を過ごす間、いざチャンスを得た時にどんな言葉で自身を弁護するかを考える時間があった。実際にその時間を活用したに違いない。というのも、ゴーンが新たに住居を構えたレバノンで8日に行った記者会見は、疑いを晴らす会見としては「力作」だったからだ。

 日産自動車を破産から救った前会長のゴーンは、年末に日本から逃げた。何カ月もの不当な扱いの後に裁判を受けるリスクよりも、大胆不敵な脱出劇をとったのだ。会見での激しい非難の矛先は、自身に反旗を翻した日産の元同僚や弁護士を同席させずに何週間も尋問を行った検察、「被告人は有罪」との前提に立った日本の司法制度、自身への「中傷」を何度も繰り返す世界の報道陣に及んだ。

 自身への非難やゴーンの言う裏切り者たちの動機を通じて、ゴーンは記者団や世界の動画視聴者を徐々にひきつけた。われわれは陰謀論が好きではないが、日産幹部と日本の当局者が協力してゴーンに反する行為をしたとの説明は、数十年にわたって「日本株式会社」を見ていれば妥当に思える。

 ゴーンによれば、日本の企業幹部はゴーンのまとめたルノー、三菱自動車、日産のアライアンスでフランスとフランス人幹部の力が増していることにいら立っていた。彼らはアライアンスを終了させるか、せめて日本側の支配力を拡大するにはゴーンを排除する以外にないとの結論に至った。コーポレートガバナンス(企業統治)に関する日本の法律が彼らの武器になった。周知の通り不透明だからだ。

 ゴーンの自己弁護の詳細は、今後挙がってくる具体的な証拠と照らし合わされるだろう。しかし、ゴーンの解任・逮捕後で最も説得力のある点の1つは、日産が企業開示に関する規則を破った罪を日本で認めたことだ。同社は、同様の容疑で訴訟を起こされている米テネシー州では無罪を主張している。

 ゴーンは、犯罪に値するレベルに達していた要素はなかったはずだとの常識的な主張もした。役員室で決着をつけるべきことだった。

 世論とメディアの現在の反資本主義的な空気の中では、保釈中に逃亡したことでゴーンを非難したくなる。ゴーンには逃亡を手助けしてくれるセキュリティー専門家を雇う手段があったからだ。ゴーンができれば法廷で無実を証明したいとも思っていることは疑いない。だがゴーンへの不当な扱いや公正な裁判を受けられる可能性の低さを考えると、(同じ立場に立った場合に)無実を証明したいと思ったメディアモラリストは何人いるだろうかと思う。

 ゴーンの訴えは信用できるように思える。日産や検察から説得力のある新しい証拠がなければ、ゴーンは世論という法廷で無罪になるはずだ。

(敬称略)

(The Wall Street Journal/The Editorial Board)