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インキュベーションの虚と実

ひとりよがりでは最強のチームをつくれない
間違いだらけの人と組織

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第8回】 2012年8月6日
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 なお、FacebookやTwitterで人となりが分かると言う人もいる。もちろん履歴書に書かれていないことがコメントなどから分かるが、仕事のことは分かりはしない。仕事のことが分かる位に色々と書いていたら、逆に問題だ。それに、ソーシャル美人ということもある。一面のみしか分からず、実際に組織に入ってどうなるかは別問題だ。

 余談だが、ある会社から社内でこいつはダメだという評価の人を雇うと、その会社からはいい人が入ってくれなくなる。逆にエースが入ると、その会社からいい人も採れるようになる。“履歴書美人”を即採用するのでなく、リファレンスをもとに判断しなければならない。

 それから、必要な人材のスペックと採用のタイミングは考えておいた方がいい。先にCFO採用の話が出たが、初期はフルタイムのCFOなど要らないが、株式上場を目指したり大型のファイナンスをやるには、CFOが必要な段階がやがて来る。しかし、「CFOとは何をする人かも分からずいたずらにスペックが合わない人を雇ったり、CFOが必要だと気付いてから雇おうとして手遅れになるような例は、多々ある」と岡島氏は指摘する。後手後手で、現実に対応できないベンチャーが多いのだ。

 そもそも、「人」を軽くみてはならない。その人の人生がかかっているのであり、起業家の都合で使ったり捨てたりするのは言語道断である。残念ながら、これを勘違いしている起業家が少なくないのが実情だ。

 筆者自身も、非常に残念な思いをしたことがある。「CFOがスグ必要だ、ぜひ紹介してくれ」と頼まれて、筆者がある人を紹介した。「本当にいい人を紹介してくれた」と感謝されたことがあるが、一年も経たずにそのCFOはその会社を去ることになってしまった。CFO本人からはちゃんと連絡はあったが、紹介を頼んだ人からも、当の会社関係者からもナシのつぶてだった。そこからの紹介依頼には、二度と応じることはないだろう。

なぜわざわざスタートアップに入るのか?
価値観を共にする意義

 あるセッションで、数名規模のスタートアップの起業家が「報酬+“何か”が必要だと思う。大切なパートナーが辞めてしまったが、どうすればよいか」との質問に、先輩のベンチャー経営者が「会社としてやりたいことが曖昧で、リーダーがどこを目指しているか分からないのではないか。アプリ作るぞ! と言われても、それはどこでもできる。人集めにはビジョン、ミッションが必要」と答えた。

 米国No.1のオンライン靴小売のザッポスは、活き活きしたヤル気あふれる職場で知られるが、その秘密は徹底したカルチャーの重視にある(参考「ザッポス伝説」)。優れた人材を寄せ集めても勝てないプロ野球チームもあるように、人材のモノがよければ、それで済むほど単純ではない。組織のパフォーマンスは、1人ひとりのベクトルの一致度や、IQ(知能指数)よりもCファクター(互いの社会性)が効くという研究結果もある。熱中できる仕事と職場、皆と一つのものを目指す喜び、金銭的な報酬だけでなくこうしたものがなければわざわざスタートアップに入りはしない。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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