日本の企業や政府は総じてコミュニケーション戦略が下手ではありますが、ゴーン被告が世界を相手にしたコミュニケーション戦略を駆使して仕掛けてきているのに、受ける側の日産がグローバル企業のはずなのにこんなに緩い対応をしていては、日本国内はともかく海外での日産のレピュテーションは大丈夫でしょうか。

 ちなみに余計なことをいうと、法務省と日産という官民の当事者が奇しくも同じ1月14日にアクションを起こしているのを見ると、両者の対応があまりに緩い結果として海外メディアの論調がゴーン寄りになっているのを見て、おそらく総理官邸あたりがテコ入れをしたのではないかと邪推してしまいます。逆にいえば、それくらいに日本の大組織も緩み切っているということなのです。

マスメディアの許しがたい緩み
掘り下げた報道がまるでなし

 ただ、法務省や日産と同じかそれ以上に緩んでいるのではと思えるのが、日本のマスメディアです。

 ゴーン被告の海外逃亡の件についていえば、会見の内容(=ゴーンの主張)や一般受けしそうな不法出国の手口については詳しく報じていましたが、法務省や日産の対応のまずさをきちんと指摘したマスメディアは、自分が知る限り皆無だったと思います。

 かつ、ゴーン被告の不法出国については、保釈請求を行なったゴーン被告の弁護士にも、法的責任は問えないとしても道義的な責任はあるはずです。それなのに、マスメディアはせいぜい弁護士たちのコメントをそのまま報じるか、ゴーン被告が保釈中に使っていたパソコンの検察への提出を弁護士が拒んだという事実を報道するくらいで、弁護士の道義的責任に言及したところは、これも自分が知る限りほぼ皆無だったと思います。

 この程度の報道、つまり事実のみを淡々と報じるだけで、何もしっかりと掘り下げた報道をしないようでは、国民の多くがゴーン被告の件から派生する日本のさまざまな問題に気が付けないのではないでしょうか。

 かつ、このマスメディアの報道の底の浅さは、他のニュースからも明らかです。たとえばIR関連の報道を見ていると、野党が言い出した“IR疑獄”という言葉を使って、IR利権を巡ってすごいことが水面下で起きているように報じるメディアもあります。