東京・有楽町「DNタワー21」の所有分売却へ
JAなどにリストラの覚悟を示す狙いも
農林中央金庫が本店ビルの売却に向けて、第一生命保険と交渉していることが16日、分かった。複数の関係者によると、早ければ2年後の売却・移転をにらんで、数百億円に上る売却額などを詰めている。マイナス金利政策の長期化で運用環境が悪化する中、JA(農協)などに対してリストラの覚悟を示す狙いもある。
売却交渉をしている本店ビルは、東京・有楽町にある「DNタワー21」。敷地面積は約7400平方メートル。地上21階建てで、土地の4分の1とビルの1階~11階部分を主に農中が所有し、残りを第一生命が所有するかたちだ。
1930年代に建てられた旧第一生命本館ビルと旧農林中金有楽町ビルが前身で、本館ビル6階には連合国軍総司令部(GHQ)の最高司令官、マッカーサーの執務室が今も残る。
そうした歴史的価値を踏まえて、老朽化した隣接する2つのビルを一体で再開発し、1995年に現在の姿になった。
農林中金は現在、DNタワーに加えて有楽町や大手町など都心部のビルに、本部機能が分散している。業務の効率化に加えて、一部のビルが建て替えを予定していることもあり、本部機能集約化の検討を進めている。
本店ビルの売却を目指す背景には事業環境の悪化もある。農中はJAが組合員から集めた貯金など106兆円を運用し、運用益をJAに還元している。しかし、マイナス金利で運用が難しくなっているにもかかわらず、JAへの還元額を急には減らせないことが大きな経営課題になってきた。
本店ビルを売却できれば、財務基盤を固められるだけでなく、今後、還元額を抑制する際に「JAに不利益を求めるだけでなく、農中自身も身を切る改革をした」という説得材料にもなる。
(ダイヤモンド編集部 中村正毅、千本木啓文、布施太郎)