もし帰国客の中から1名でも感染者が出て、その人がうっかり通勤ラッシュのパリの地下鉄に乗り、職場に出社していたら、政府は世論の猛攻撃を受けることになります。それを防ぐための経済合理性としては、「お金がかかっても隔離はあり」だというのが、フランス政府の考えだと私は思います。

 帰国便の乗客をきちんと追跡すると言っていたわりには、日本政府は帰国便から感染者が3人出たにもかかわらず、別の発熱をしている乗客から新型肺炎の検査を拒否されて困っていました。管理できるはずのものが実際はできていないことから、政治リスク的には判断が間違っていたようです。

株価は不吉な予測ではなく
人々の不安で暴落する

 さて、最後にもう1つ問題です。アメリカの株式市場は23日の武漢市の閉鎖を受け、27日に暴落劇を演じます。しかし、翌28日には急騰して元に戻りました。このとき、株を売るのと買うのと、どちらが正しい選択だったと思いますか。

 もし世界的に新型肺炎のパンデミックが起きれば、それによって世界の観光需要や外食需要、外出需要が停滞することから、株価の暴落が起きることは必定だといわれています。では、なぜ28日にアメリカの株式市場が戻したのか。理由は、株価はこれから実際に起こることについての予測によって動くのではなく、「人々がどう考えるか」によって動くからです。

 23日の武漢市閉鎖で「どうやらパニックが起こりそうだぞ」と思っていたところで、株が売られに売られ、27日の株式市場は暴落しました。一方、翌日になって「どうやら、まだパニックは起きていない」と思った人たちが買いに回ったところ、その買いが買いを呼んで、市場は回復した。このとき起きたのはそういうことだと思いますが、問題はその先です。

 新型肺炎の潜伏期間は14日。武漢市が閉鎖された直後の1月25日に中国の旧正月である春節が始まり、世界中に観光客が移動を始めました。パンデミックが起きて大問題になるとすれば、それは来月、2月5日から10日までの状況次第です。

 そしてその直前、「どうやらパンデミックになりそうだぞ」と株式市場の参加者が考えた瞬間、世界の株価は再び大きく動くリスクがあるでしょう。株価というのは、実は行動経済学的に見れば、経済合理的に形成されるものの象徴なのです。

 さて、いかがでしょうか。行動経済学的な視点から見ると、今回の新型肺炎騒動をどう見据え、どのように行動すべきかという、いくばくかの参考になるかと思います。いずれにせよ、今この時点で言えることは、マスクをなるべく早く手に入れて着用することが望ましい、ということでしょう。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)