コーセーを直撃。成長戦略に黄信号がともっている。コーセーを直撃。成長戦略に黄信号がともっている Photo:SOPA Images/gettyimages

資生堂・コーセー・ファストリ…
製造業への打撃も計り知れない

 国家を挙げての経済活動の「封鎖」が、日本企業を直撃している。

「中国の内需」と「インバウンド需要」を軸に成長戦略を描いてきた化粧品業界はダブルパンチだ。資生堂やコーセーは現地の店舗・カウンターを営業停止にしているが、悪影響は中国国内の消費にとどまらない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の佐藤和佳子アナリストは、「代購(ソーシャルバイヤー)のメインの購入場所は韓国にある免税店。今後、中国人の個人旅行が禁止になると、トラベルリテールの減収は避けられない」と指摘する。

 ファーストリテイリングは、武漢を中心にユニクロ50店舗の営業を停止。グレーターチャイナ(中国・香港・台湾)地域は、2019年8月期に売上高約5025億円、営業利益890億円を上げた稼ぎ頭だけに痛手だ。地方当局が商業施設を営業停止にする方針かつ店舗スタッフを確保できないという理由から、イオングループも武漢市内の3モールをクローズしている。

 何より、国内製造業への打撃は計り知れない。すでに封鎖された武漢は、製造業の集積地だ。帝国データバンクによれば、武漢に進出する日本企業199社のうち92社が製造業で占められる。

 武漢は、中国国有の自動車メーカー、東風汽車のお膝元でもある。日本勢では、ホンダと日産自動車が合弁を組む。とりわけ、ホンダが武漢に持つ3工場の生産能力は年産60万台、中国生産の半分を占める。「昨年に新工場を立ち上げたばかりなのに災難だ。春節休暇明けの労働者の戻り、部品物流の寸断、販売予測の全ての見通しが立たない」(ホンダ社員)と困り顔だ。「1週間でも稼働が停止したら、1万台の減産。大きな減益要因となる」(自動車アナリスト)。

 それだけではない。自動車など重工業のイメージが強い武漢だが、「もはや、ディスプレーや半導体などハイテク産業の街に変貌を遂げている」(エンジニアリング関係者)。目下のところ、中国国有のBOE(京東方科技集団)が超大型液晶パネル工場を増設中。「このプロジェクトに関わる企業の7割が、東京エレクトロンやニコンなどの日系サプライヤー。立ち上げプロジェクトは実質的にストップしそうだ」(同)と打ち明ける。