新型肺炎、中国経済への影響度がSARS流行時とは決定的に異なる理由新型肺炎の感染拡大を受け、北京では公共交通機関での体温などの検査が行われている Photo:Kevin Frayer/gettyimages

新型コロナウイルスのアウトブレークが起こった。中国の消費力に頼った経済成長は、これから逆回転する恐れがある。(ダイヤモンド編集部新型肺炎取材班、特任アナリスト 高口康太)

 中国工商銀行4.27%安、チャイナモバイル(中国移動)3.23%安、中国中信(CITIC)5.07%安──。旧正月休暇が明け再開した香港株式市場は29日、中国本土の主要銘柄が全面安となった。中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が、経済展望に大きな影を落としている。

 世界保健機関(WHO)によると28日現在、中国では4537人が感染、106人が死亡した。タイ、シンガポール、日本など14カ国・地域でも感染者が出ている。WHOは世界的に高いリスクがあると注意を促している。

 感染は急拡大しているが、忘れてはならないのが、ウイルスの感染力と毒性(致死率)は反比例することだ。今回の場合、毒性は必ずしも強くなく、健康な人が感染しても死亡リスクは低い。それよりも警戒すべきは、「中国経済のバイタルサイン」だ。感染拡大を抑止する目的で、中国政府は市民生活を極端に制約し始めている。

「この封鎖はいつ終わるのか。まったく先が見えない」。武漢の大学で教員を務める日本人男性は不安を訴える。政府は武漢など湖北省の13都市を23日に封鎖した。この日以降、13都市への出入りは厳しく制限され、公共交通機関も全面的に停止している。現地の日本人は28日から、日本政府が手配したチャーター便で希望者から脱出し始めたが、この男性は中国に残ることを選んだ。ただ学外に出る公共交通機関はなく、授業再開のめども立たない。

 また湖北省以外でも実際には、人が移動したり集まったりすることが制約されている。