中国で発生した新型コロナウイルスは、すでに14カ国・地域に広がっている。29日朝には発生地の湖北省武漢にいた日本人206人がチャーター機で帰国。喜ばしいが、帰国者の中に咳・発熱症状を持つ人がいたという報道を読み、国内での感染拡大を懸念してしまう人も少なくない。そんな心理を背景に、多くの人がマスクを買おうとするのだが、ところがドラッグストアなどでは今、品切れや購入数量制限が続出中だ。理由は日本在住や訪日中の中国人が大量に買い求めているからだ。あの大量のマスクはどこでどうなっているのか。中国を熟知するジャーナリストによる、マスク蒸発問題のルポ。(ジャーナリスト 高口康太)
23日を境にマスク市場激変
メルカリは異次元相場に
「マスクがない。どこを見ても売り切れ」
帰宅した妻が嘆いた。中国の友人に送るためにマスクを買おうとドラッグストアを数軒回ったというが、どこも売り切れだったという。近所のスーパーに少しだけ残っていた個包装のマスクをどうにかゲットできたが、数十枚入りの大容量のものはまったく見つからなかったという。
それならばネットで購入しようとアマゾンを開くと、品切れの表示が目立つ。在庫があるケースでも普段よりもかなり値段が上がっているようだ。アマゾンのデータを調べると、品切れや価格高騰が起こったのはどの商品も基本的に同じ日。1月23日だ。この日は中国政府が、武漢など湖北省の複数の都市を封鎖し、各都市に繋がる公共交通機関を運行停止した日だ。省外の中国人にとっても、新型肺炎を受けた非常事態が通告されたに等しく、この日を境に中国人はみな危機対応モードに入っている。