QRコードで利便性向上
チケットレスも容易に実現

 QRコード乗車券は、乗車券本体に情報が書き込まれているのではなく、乗車券の購入時に区間や運賃などの情報がネットワーク上に記録され、その情報にひもづいたQRコードが発行される仕組みだ。改札機は乗車券に印刷されたQRコードを読み取って、ネットワーク上のサーバーのデータと照合し、入出場の判定をする。乗車券にデータを書き込む必要がなくなるため、駅務機器が大幅に簡易化されるというわけだ。

 既に広島の新交通システム「スカイレール」は2013年、沖縄のモノレール「ゆいレール」が2014年、福岡の「北九州モノレール」が2015年に磁気乗車券を廃止してQRコード乗車券を導入している。ただ、これらはいずれも単距離の完結した路線であり、JRや大手私鉄、地下鉄など他社と相互直通運転を実施している鉄道事業者は、磁気乗車券を廃止して一気にQRコード乗車券に切り替えるのは困難なのが実情だ。

 ここで阪神の現実的な戦略が浮かび上がる。阪神が目的の第一に「利便性向上」を掲げているのは、磁気乗車券を一気にQRコード乗車券に置き換えるのではなく、QRコード乗車券の利便性を高めて磁気乗車券から転移を促すことで、段階的に磁気乗車券の利用率を下げ、磁気乗車券に対応した駅務機器を減らすことで、着実にコストダウンを進めていきたいという狙いがあると思われる。

 ではQRコードの導入で利便性は上がるのだろうか。QRコード乗車券のもう一つの利点は、乗車券を発行する場所の制約がないことだ。磁気乗車券は、乗車券に磁気データを読み込ませる必要があるため、専用の券売機でしか発券ができない。しかし、QRコード乗車券であれば情報はネットワーク上にあるため、乗車券の情報とひもづくQRコードさえあれば何でも乗車券にできる。

 紙に印刷をしなくても、QRコードをスマートフォンの画面上に表示すれば読み取りが可能なので、ネット決済と組み合わせることでチケットレス化も容易に実現できる。自宅でも海外でも乗車券の発行が可能になり、駅の窓口や券売機の利用をさらに削減するだけでなく、販路の拡大にもつながる。当面は自社で完結する乗車券だけでもQRコードで発行できるようにし、割引やポイントなどを付与するということも考えられるだろう。