鉄道やバスに、じわじわと広がりを見せているQRコード決済。都市部ではSuicaなどのICカード決済がずいぶん普及しているが、バスやローカル線など地方交通への普及は高額な導入費用がネックとなる。そこで期待されているのが、都市と地方の両方で、ICカードがカバーできないスキマを埋めるQRコード決済である。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

一段のチケットレスを推進する
QRコード決済に注目が集まる

QRコード決済の持つ可能性とは?
ICカード決済とQRコード決済、どちらを選ぶかという議論ではなく、両方のメリットをうまく生かして住み分けすれば、「切符がなくなる日」は来るかも知れない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 10月20日、経済産業省が地方交通の鉄道やバスにQRコード決済を使った運賃収受の普及を促す仕組みづくりの検討を開始したと時事通信が報じた。

 これに対して経産省の正式なコメントはないが、今年7月に200以上の企業、業界団体、自治体などからなる「キャッシュレス推進協議会」を発足し、QRコード決済の規格統一に着手している。交通分野においても同様の検討が進んでいても不思議ではない。

 鉄道・バスのキャッシュレス化・チケットレス化は、2001年に登場したJR東日本の非接触型ICカード乗車券Suicaが推進してきた。電子マネーとしても駅ナカにとどまらず広く採用されており、交通のみならず日本のキャッシュレス化の牽引役といっても過言ではないだろう。

 東京では鉄道利用者のIC乗車券利用率は既に9割を超えている。関西圏、中京圏のみならず、各地方都市でもIC乗車券が導入され、全国相互利用も進んでいるが、なぜここに来てQRコード決済が浮上してきたのだろうか。

 交通事業者がキャッシュレス化・チケットレス化を進めてきたのは、そのメリットが多岐にわたるからだ。サービスの向上はもちろんのこと、駅設備を根本的に合理化する可能性を秘めている。

 従来の磁気乗車券は、券売機や自動改札機の内部で、磁気データの読み取りや書き取り、印字やパンチなど、機械的な処理がされていた。精密機器がぎっしりと詰まった機械はイニシャルコストが重く、可動部・接触部が多いため、頻繁にメンテナンスの必要がありランニングコストもかさむ。

 IC乗車券のようにデータを通信で読み込めば、複雑なメカニズムを簡素化して大幅なコストダウンが可能だ。また乗車のたびに券売機に現金を投入して乗車券を購入する必要がなくなるので、券売機の釣り銭補充や売上金の管理などコストとリスクを削減できるし、利用機会が減る券売機を削減することもできる。

 その究極の姿がリニア中央新幹線となる予定だ。航空機の搭乗券が、予約・決済から保安検査や搭乗口の通過までスマホ上で完結するように、JR東海はリニアを完全チケットレス化し、中間駅には切符売り場を設置しない方針を示している。

 かつて切符の発売や改札業務が人間から機械に置き換わったのと同等か、それ以上に大きな変化となる可能性がある。