『営業はいらない』三戸政和さんの新刊『営業はいらない』

 今はSNS隆盛の時代であり、情報流通のコストは限りなくゼロに近い。ある一人の人間が、ある商品から得た感動的なエクスペリエンスは、あっという間に世界で共有される。これがエクスペリエンス戦略が現代の戦略としてフィットする一つの理由でもある。実は、筆者もまんまとバルミューダの戦略にはまり、加湿器を購入、SNS投稿をしてしまった。

 同社の加湿器「Rain」は、加湿器の一番の難点である「毎日の給水が必要」という「後ろ向きな作業」を、給水することが楽しくなる「前向きな体験」にシフトさせている。

 通常の加湿器は、特殊な貯水タンクを本体から外し、水を滴らせながら運んだ後、フタを開けて水を入れ、フタを締めて加湿器にセットするという作業が必要となる。

 しかし、同社の加湿器は、ヤカンなどに水を入れて、加湿器の上から注ぐだけで、何かを外したり付けたり、開けたり締めたりという作業が不要なのだ。

 そして、それ以上に給水を楽しくさせているのが注ぎ口の形状だ。大きなガラス球のようなものに水を注ぐデザインになっており、水の流れを気持ちよく感じることができるのだ。蓮の葉の上に水滴が流れ落ちるロータス効果が見える心地よさを感じるとともに、植木鉢に水をやって何かを育てているような錯覚にもおちいる。この利便性とさりげない快感は、体験したら誰かに言いたくなるだろう。

 つまり国民総メディア化の時代においては、ユーザーのエクスペリエンスを追求した商品を形にできれば、自分のメディアを持つ顧客が勝手に宣伝することで無駄な営業は必要なくなるということだ。同社の今日の成功は、正しい戦略があれば、営業自体が必要なくなることを、見事なまでに体現している。

 このように今後は、さまざまな業界において、エクスペリエンス戦略を駆使することで、営業などすることなく業績を上げる企業が増えるはずだ。テスラ社やバルミューダのような適切な戦略があれば、営業という戦い(戦術)を減らせるのは間違いない。

 もし今、営業マンであるあなたの業務に無理が生じているなら、それは川上の戦略が間違っている可能性がある。もしかしたらあなたは必要のない戦いを強いられているのかもしれない。

>>続編『1年で2500人減少!製薬会社の営業MRの仕事を奪った存在とは』はこちら

(日本創生投資 代表取締役社長 三戸政和)

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