1万人を超えるリーダーは、「同じこと」に悩んでいた。
本連載は、1万人を超えるリーダーから寄せられた「悩み」に対し、明確な答えを提示するものだ。
書き手は、日本最高峰のビジネススクール「経営アカデミー」で19年以上の登壇実績を誇り、経営者や企業幹部を指導してきた浅井浩一氏。全国で年間100回以上の研修や講演を行い、コンサルタントとしても現場に入り込む。
「離職率を抑え、メンタルを病む人をゼロにし、なおかつ目標を達成し続ける」ために、リーダーとともに考え、行動し、悩みの解決を図る。業種・業態を問わず、職場再建率は100%。これまで指導してきたリーダーの数は1万人を超える。発売即3刷のベストセラー『1万人のリーダーが悩んでいること』の著者でもある。
【悩み】人の相性を意識せず、スキルだけで採用した結果、協力関係にあったチームが割れました。相性を重視して採用すべきだったのでしょうか?
人間関係は複雑なもので、長くつき合いを続けていく中で相性も変化します。出会ってすぐはけんかばかりだったのに、時間がたてば相性がよくなることもあれば、その逆もあります。
つまり、「相性のいいメンバー」だけをそろえてチームを形成するのは、現実的には不可能と考えてよいでしょう。相性優先でチームを組むのはおすすめしません。
リーダーであるあなたに求められるのは、部下たちを「目的」のもとに束ねる力です。
「私たちは、個人の相性の良し悪しを超えた、大きな目的のもとに集まっているのだ」ということをメンバーに伝え、そして束ねるのがリーダーの役割なのです。
相性の悪さは、感情に起因します。リーダーがいきなり相性の悪い者同士を集め、「我々のチームの目的は何か。達成すべき目標は何か。そのために何が必要か。みんなで話し合おう。相性なんて関係ない」と呼びかけたところで、無理があります。
理屈は「リーダーの言うとおり」なのですが、人間としての感情がどうしても、邪魔をするのです。
「理屈」の前に「感情」に寄り添う
ある農業工作機器メーカーでは、整備部門と営業部門の仲が悪い状況が数年にわたって続いていました。
整備部門は日々、営業部門に対して「整備がどんなに忙しい状態でもお構いなしで、点検を次から次へと安請け合いする。おかげで今度の週末もまた休日出勤だよ」とこぼします。営業部門は整備部門に対して「おれたちが日々、お客さまにどれだけ頭を下げているのかわかっているのか。整備はいつも言い訳ばかり」と嘆きます。
そんな中、整備部門のミスでトラブルが起き、解決のために営業部門の協力を仰がなければならない場面が訪れました。