高くても買いたい人が存在する現実

 人口100人の街に1店舗だけあるドラッグストアに、200枚のマスクが売られているとしよう。そして平常時は毎日、1人が1枚のマスクを買っているとする。そんななか、新型肺炎が流行りはじめ、マスクを1日10枚買う人が増え始めた。20人が買った時点で、店のマスクは売り切れる。

 翌日、店には100枚のマスクが入荷されるが、10人が10枚ずつ買うので、残り70人はマスクが買えないままである。前日に10枚買った人も、在庫が減ると不安になり、買い足したい気持ちが高まる。

 人々が「安心するためにマスクを10枚買いたいが、値段が2倍なら2枚だけ買いたい」と考えていたとする。そんな時、最初に購入した20人が「2倍の値段で売ってあげます」といえば、皆が安心するだろう。つまり、高値転売が許されたがために、全員がマスクを入手できるようになったのだ。「転売はケシカラン。禁止しよう」となっていたら、マスクが入手できなくて困った人が大勢出たはずである。

 筆者としては、貪欲な転売人に稼がれるよりは、マスクを売っている店が値上げしてくれる方が気持ちもスッキリするが、店としては「値上げしてひんしゅくを買うと、将来にわたって客が来てくれなくなってしまう」と心配するので、値上げをする店は少ないだろう。

 そうであれば、転売人も世の中の役に立っているといえるのかもしれない。たとえば持病があってマスクが必要な人が、マスクが入手できなかった状態から「高い金を払えばマスクが手に入る状態」に「改善」したのだから。

グローバル経済において転売人は必要悪

 日本が常識と正義感から転売禁止法を作ったとしても、日本と異なる常識や正義感を持った国も存在するかもしれない。そうした国をA国としよう。

 A国の転売人は、転売が禁じられているわけではないので、日本で大量のマスクを購入してA国において高値で販売して大いにもうける。A国の国民は、高値でもマスクが買えるが、日本国民は誰もマスクが買えない事態になりかねない。むしろ、日本はマスクの輸入国なので 、単に製造業者が日本に売りに来なくなるだけかもしれないが。