しかし、当時筆者は、この本や木村氏の本を読んで、「富裕層には生活費2年分がいいかもしれないけれど、普通のサラリーマンが2年分のお金を別途貯めるまで投資を始められないとしたら、なかなか投資に取り掛かることができないな」と疑問を感じていた。そして、「株式や投信は部分売却ができて十分な流動性があるのだから、生活防衛資金は3カ月分くらいで十分だ」という意見に至った。

金融庁は「つみたてNISA」で
早期の投資を推す

 近年、金融庁は、「つみたてNISA」での資産形成を推しており、大きなお金ができてから投資するのではなく、将来の資産形成について積立投資で目指すことを推奨している。つみたてNISAでの運用は、20年間運用益が非課税で、途中で解約すると非課税期間を十分に活用できなくなるので、部分売却は「少々もったいない」。ただ、いざというときには運用資産を売却してお金をつくることができるので、お金が十分貯まっていない若いサラリーマンなども、直ちに利用して差し支えないのではないだろうか。

 なお、一般NISAやつみたてNISAでの途中売却のコストは、投資対象の期待リターンが年率5%だとすると、その約2割の年率1%くらいのものだと思うといい。「手数料1%を超えるアクティブ運用はもったいないから、売却してインデックスファンドに乗り換える」という選択はありかもしれない。しかし、手数料がすでに0.2%程度まで下がっているインデックスファンドについて、「手数料がより安いインデックスファンドが出た」ことを理由に売却して入れ替えようとするのは、節税運用枠を失うという損失の方が大きいだろうから得策ではない。次期の投資からコストの低い商品に変えたらいい。

 一方、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、特に課税される所得がある人には税制上大いに有利な制度だが、原則として60歳まで資産を引き出すことができないので、この点には少々注意が必要だ。

 就職から間がない若いサラリーマンには「取りあえず、つみたてNISAから始めてみるのが無難ではないか」と勧めるのが、現実的かもしれない。

 しかし、少々説教臭くなるが、iDeCoで積み立てられる金額は、多くの場合将来に向けて貯めていかなければならない金額を下回るので、iDeCoの流動性が制約になるようなお金の管理では拙いと申し上げておこう。課税される所得のある勤労者には、iDeCo及び勤務先に制度がある場合の企業型確定拠出年金は圧倒的に有利な制度なので、なるべく大きく利用することが適切だと考えておくべきだろう。