むろん、症状が出ているときは不快だったし、不自由にも感じたが、数分から1日ぐらいで消えたし、周りの友達に尋ねたところ、全員が「私もそうなるときがある」と言うので、異常なことではないと思っていた。

 それなのに、35歳にしてついに耳鼻咽喉科を受診するに至ったのは、症状が10日間以上も続いていたからだ。

 じつは朋子さん、4カ月ほど前に第一子を出産したばかりで、心身ともに不調を感じていた。わが子の夜泣きで寝不足なのはもちろん、肩こり、腰痛、腕痛にも悩まされていた。ゆっくりトイレに行けないからだろうか、便秘もひどかった。常に疲労を感じ、ぐんぐん大きく重たくなるわが子を見ていると、うれしい半面、母乳とともに生気を吸い取られているような気になり、怖いと思うことがあった。食欲不振に陥り、体重も減った。そして、聴こえに異常があらわれた。

 以前は、あまり気にせずスルーしていた症状が、今回はひどく気になった。特に、赤ちゃんの泣き声は、頭全体にキーンと反響し、つらかった。軽いめまいも起きた。体がふわふわと浮いているように感じ、吐きそうになった。

 最初はすぐ治ると高をくくっていたが、朝起きて、声を出してみると治っていない。がっかりする日が続き、表情や態度にも出たのだろう、夫の渉さん(仮名・38歳)が尋ねてきた。

「どうしたの、このごろ元気がないよ。顔色も悪いみたいだし」

 耳の不調を打ち明けると、渉さんはさっそくスマホを操作し、何年か前にあった、歌手の中島美嘉さんの病気休養の記事を見せてくれた。

「耳管開放症って、こんな症状だったのね。ぜんぜん気が付かなかった。ふーん、彼女もそうだったの」

たとえ幸せでも
ストレスが悪さをすることも

 さっそく、耳鼻科のホームページを検索し、耳管開放症に詳しくて、治療に自信がありそうなクリニックを探し、受診した。

 朋子さんの話を聞き、内視鏡で鼓膜の動きを観察し、さらに機械による耳管機能検査を行った後、医師は冒頭の通り「耳管開放症ですね」と言った。

「耳管とは、鼻と耳をつなぐ細い通り道のことで、通常はほぼ塞がったような状態になっているのですが、つばを飲み込むと一瞬開きます。エレベーターに乗ったときや電車がトンネルに入ったときなどに耳が詰まった感じになり、つばを飲み込んだら治った、という経験はありませんか」