若い男性店員は
性病だと勘違いし、逃げた
(あ、これ嫌な感じ)
ある夜、唇の熱っぽさと乾き、気持ちの悪いカユミに、尚美さん(仮名・31歳)は嫌な予感がした。年に1~2回、多忙な時期に限ってかかることが多いような気がするあの病気「口唇ヘルペス」だ。
最初にかかったのは確か、中学生ぐらいだったと思う。毎度うっとうしくはあるが、我慢しているうちにいつの間にか治る。だから病院に行ったことはない。近頃はドラッグストアで塗り薬を見つけたので愛用している。水泡ができる前に塗れば、悪化を防げるような気がするからだが、ちゃんと効いているかどうかは分からない。
(塗り薬、あったよね)
薬箱をがさがさと探したが見つからない。
「どうしたの」
夫の伸彦さん(仮名・30歳)が尋ねてきた。
「うん、口唇ヘルペスみたいなの。薬塗りたいんだけど、どこにあるか知らない?」
「うん、知らないなぁ。使い切ったんじゃないの。尚美は先週、風邪ひいて熱があったから、免疫力が下がってるんだね。今日は、早寝した方がいいよ」
伸彦さんはそういうと、いつものようにおやすみのキスをした。
結婚して約1年。尚美さんが口唇ヘルペスを発症したのは、はじめてだった。