本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中

 この後、1937年(昭和12年)に「母子保護法」、1941年(昭和16年)に「医療保護法」が成立し、法律の名称としての「○○保護」という用語法が一般的になっていく。そして敗戦後の1946年(昭和21年)、旧生活保護法が成立し、法律の名称として「生活保護」が出現した。そして1950年(昭和25年)、新生活保護法が成立した。

 このことによって、日本は権利性を明確にした近代の社会保障制度を持つ国家となった。しかし、わずか4年後の1954年(昭和29年)、大蔵省と厚生省のバトルで厚生省が敗北し、権利性の保障は不明瞭になっていく。

 冒頭で紹介した1951年(昭和26年)のDV被害女性の訴えは、幸いにも厚生省が「濫給より漏給」(不正受給を問題にするより、給付漏れを問題にしよう)というスローガンのもと、救済を前面に押し出していた時期であった。

100年間変われない日本に
社会のイノベーションは可能か

 今回は、明治時代から戦前の記事データベースに現れる「生活保護」を通じて、用語と制度の出現と変化を眺めてみた。当時と現在では、世界も日本も大きく様変わりした。しかし日本社会の生み出す問題は、驚くほど変わっていない。変われない理由を、「人間だから」あるいは「日本だから」で片付けてよいのだろうか。

 2020年の日本では、少子化対策の失敗が明確になった。「ジェンダー平等指数」が世界100位に達した年はない。「イノベーション」を推進しつつ、逆行する教育・研究施策も推進している。

 これらすべての社会課題の共通の背景は、「実は変われない日本」ではないだろうか。生活保護を通じて、筆者はそう確信している。

(フリーランス・ライター みわよしこ)