マルクス・ガブリエル氏
マルクス・ガブリエル氏  写真:大岩央

「世界で最も注目を浴びる天才哲学者」と呼ばれるマルクス・ガブリエル氏。すべてがフラットになり、あらゆる情報が氾濫し、何が真実なのか、真実など存在するのかわからなくなった現代を、彼はどう見ているのか。日本の読者に向けて行われた独占インタビューを基にしたマルクス・ガブリエル氏の最新作『世界史の針が巻き戻るとき~「新しい実在論」は世界をどう見ているか』から一部を抜粋して、世界が直面している危機に対する彼の舌鋒鋭い意見を紹介する。(マルクス・ガブリエル、訳/大野和基)

我々はGAFAに「タダ働き」させられている
彼らを規制すべき理由

 GAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)は、今や世界を統治しているとも言える状況にあります。GAFAの統治を止めるべく、何か規則や法律を設けるべきだと私は思います。身動きできないくらい徹底的に規制すべきです。

 どのような理由、方法、法制度で、など議論の余地はありますが、私の提案はこうです。GAFAはデータで利益を得ていますね。データム(データの単数形)とは、アルゴリズムと私が行うインプットの間にある差異です。

 まず、インプットとは何かについてお話ししましょう。私がバーベキューパーティを主催したとする。写真を撮ってアップする。フェイスブックやグーグルは、そのアップされた写真から利益を得ます。バーベキューパーティ自体からでは当然ありません。でも、バーベキューパーティを主催して写真を撮るのは私です。これは労働と言っていい。私が手を動かしているのです。歯牙にもかけないような会社のために価値を生み出しています。

 フェイスブックが存在する前は、写真のアップなんてしようとも思わなかった。フェイスブックがなかったからです。恐らく写真を撮ることすらなかったでしょう。家族のアルバム用には撮ったかもしれません。それが、今や人々はフェイスブックのために写真を撮っている。これはつまり、人々がフェイスブックに雇われているということです。フェイスブックのために、文字通り働いているんです。

 フェイスブックは彼らにいくら払っているか?ゼロです。ですから、我々はフェイスブックに税金を課すべきです。それが解決策の一つですが、法的な問題などがいろいろありますから、難しいでしょうね。もっといいのは、税金の代わりにベーシックインカムを払わせることです。

 想像してみてください。GAFA企業が、彼らのサービスを使っている人々に分単位でベーシックインカムを払わなければならなくなったとしたら。ドイツでの最低賃金は一時間約10ユーロです。ですから、私がGAFAのいずれかのサービスをネット上で一時間使ったとする。彼らはユーザーが何時間消費するか簡単にわかります。GAFAのユーザーなら当然アカウントがありますから、彼らが提供する価値からマイナスして、私が生み出した価値を私のアカウントに紐づけることができる。

 彼らは私にデータを提供してくれます。レストランに行きたいと思ったら、レストランに関するデータをくれます。その彼らがくれる価値を10ユーロからマイナスして払ってもらえばいい。きっと金額に換算できます。そんなに難しいことではない。私の推定では、1時間につき7ユーロか8ユーロくらいになるでしょう。これが、よりよい解決策です。

 各国政府は、我々国民がGAFAに雇われているという事実を認識したほうがいい。近いうちに、GAFAはすべてを変えるか我々にお金を支払うかのどちらかを行うと思います。それで経済的な問題の多くは解決されるでしょう。ネット検索をするだけでお金持ちになれるのですから(笑)。富豪は言い過ぎかもしれませんが、十分食べていくことはできるでしょう。