熟練するにつれて「実験の重要度」が増す理由

 新しいスキルを学び始めるときは、自分より進んでいる人の例に従うだけで十分な場合が多い。そしてウルトラ・ラーニングの原則を考える際には、「メタ学習」(1つ目の原則)が最初に検討される。

 あるテーマがどのような要素に分解されるかを把握し、他の人がそれを以前にどのように学んだかを知ることで、有利なスタートを切ることができる。

 しかし、スキルが向上するにつれ、他の人の例に従うだけでは不十分になることがよくある。そうなった場合、実験を通じて自分の道を見つけるしかない。

 その理由の1つは、誰もが最初は同じ場所からスタートするため、学習の最初の段階はすでに大勢の人々が通って踏みならされており、十分なサポートも行われているためだ。

 しかしスキルが向上するにつれ、教える側に立てる人が少なくなり、仲間となる生徒の数も少なくなる(したがって参考書や学校、インストラクターの市場も縮小する)だけでなく、自分自身がこれまで学んできた人々と袂を分かつようになる。

 初心者が2人いたとすると、彼らが持つ知識やスキルは極めて似通っているだろう。しかし専門家が2人いれば、彼らがすでに習得しているスキルセットはまったく違うため、スキルを向上させることは次第に個人化され個々に異なる取り組みとなるのである。

 熟練するにつれて実験の価値が高まる第2の理由は、基本をマスターした後に能力の向上が停滞する場合が多いことである。

 スキルを習得する初期の段階では、学習は蓄積する行為だ。新しい事実や知識、スキルを身につけ、これまで解決方法を知らなかった問題を処理するのである。

 しかし上達すると、学習した内容を捨てる必要が出てくる。以前は解けなかった問題を解く方法を学ぶだけでなく、古くて効果のないアプローチは忘れてしまわなければならないのだ。

 プログラミングの初心者と上級者の違いは、特定の問題を解けるかどうかではない。上級者は問題を解く最善の方法を知っているのだ。

 それは最も効率的で無駄がなく、後で頭痛を引き起こすこともない。上達に伴い、知識を蓄積するよりも忘れることが学習になると、実験は学習と同義語になり、安全地帯の外に出て新しいことを試すようになる。

 習熟するにつれ実験の重要度が増す最後の理由は、多くの技能において、熟練だけでなく独創性からも見返りが得られるからである。

 偉大な数学者とは、他人が解けない問題を解くことのできる人であり、以前に解かれた問題を簡単に解くことのできる人ではない。

 成功するビジネスリーダーとは、単に以前のビジネスリーダーのスタイルや戦略を真似できる人ではなく、他のビジネスリーダーが見出せなかった機会を見つけられる人のことだ。

 芸術の世界でゴッホを最も有名な画家の1人にしたのは、彼の技能だけでなく、独創性だった。創造性に価値が置かれるようになると、実験が不可欠になるのである。

(本原稿は、スコット・H・ヤング著『ULTRA LEARNING 超・自習法』〈小林啓倫訳〉からの抜粋です)