保湿剤「ヒルドイド」や消炎鎮痛剤「モーラステープ」など、なじみの処方薬の“ぜいたく部分”が10月から患者への追加負担になる。特許切れブランド薬はぜいたく品扱いになるのだ。特集『薬局・薬剤師 サバイバルダンス』(全24回)の#7では、1095品目の処方薬で患者の自己負担が増加する新制度の内情に迫る。(医薬経済社副編集長 槇ヶ垰智彦)
「ヒルドイド」「モーラステープ」
10月から1095品目の自己負担追加
医療財政の逼迫を受け、国が先発のブランド薬よりも割安なジェネリック医薬品の使用促進に本格的にかじを切ってから約20年。すでに全体の約8割がジェネリックに置き換わった中で「最後の仕上げ」と言わんばかりに、厚生労働省が10月から前例のない新制度を導入しようとしている。
患者がジェネリックを拒否してブランド薬を希望した場合に「追加負担」を求める制度だ。ブランド薬を使いたい場合は、ジェネリックとの差額の4分の1を追加で支払いなさい、というものである。
日本の医療保険制度では、保険が使える医療と、保険外の医療を併用する「混合診療」は認められていないため、こうした追加負担も普通はNGだ。そこで厚労省は「選定療養」という仕組みを転用して今回の新制度を実現させた。
選定療養とは、入院時に個室などを希望した患者に対する「差額ベッド代」や、紹介状なしにいきなり大病院を受診した患者からの追加料金の徴収を認めるもの。平たく言えば「ぜいたく部分」への対処だ。
つまり、10月以降に特許切れブランド薬を希望する患者は「ぜいたく」と見なされて追加料金を取られると言っても過言ではない。
当面の追加負担の対象となるものは計1095品目に及ぶ。一般にもなじみ深い保湿剤「ヒルドイド」や消炎鎮痛剤「モーラステープ」といった外用剤、ぜんそく薬「シムビコート」、抗てんかん薬「イーケプラ」、さらには「アリムタ」などの抗がん剤の注射剤まで幅広く対象となる。