あらゆる種類のスキルの習得に使える「ウルトラ・ラーニング」という勉強法が話題だ。このメソッドを体系化したスコット・H・ヤングは、「入学しないまま、MIT4年分のカリキュラムを1年でマスター」「3ヵ月ごとに外国語を習得」「写実的なデッサンが30日で描けるようになる」などのプロジェクトで知られ、TEDにも複数回登場し、「世界の勉強法マニア」たちを騒然とさせた。本連載では、この手法を初めて書籍化し、ウォール・ストリート・ジャーナル・ベストセラーにもなった話題の新刊『ULTRA LEARNING 超・自習法』の内容から、あらゆるスキルに通用する「究極の学習メソッド」を紹介していく。

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どうすれば、忘却を防げるか?

【手続き化:「手続き的知識」にして覚える】

 「体に染みついたスキルは忘れない」ということを、なぜ「like remembering trigonometry
(三角法を覚えるような)」ではなく「like riding a bicycle(自転車に乗るような)」と表現するのだろうか?

 実は、この慣用表現は、想像以上に神経学に関する事実に即している可能性がある。

 自転車に乗るといった「手続き的知識」(何かを行うための知識)は、ピタゴラスの定理や正弦定理のような「宣言的知識」〔「~ならば~である」のように、宣言的な文章によって表すことが可能な知識〕とは異なる形で脳内に保管されているという証拠があるのだ。

 この2つの知識の違いは、長期記憶においても異なる意味を持つ。

 「自転車に乗るような」手続き的な知識は、覚えておくためには意識的に思い出す必要のある知識に比べて、忘れられる可能性がはるかに低いのである。

 この発見は、私たちの学習にも利用できる。学習に関する有力な理論によれば、ほとんどのスキルにおいて、その獲得は段階的に進む。

 宣言的なものから始まり、練習を重ねるにつれて、それが手続き的なものになるのだ。

 この「宣言的から手続き的へ」という移行の完璧な例が、タイピングである。キーボードでの入力を学び始めたとき、文字の位置を覚えなければならない。

 単語を打つたびに、あなたはその単語の文字を考え、キーボード上の配置を思い出し、指をその位置に移動して押す必要がある。

 このプロセスは失敗する可能性があり、キーがどこにあるか忘れてしまって、下を見て入力することになる場合もある。

 しかし、練習を重ねると、次第に下を見る必要がなくなってくる。

 最終的には、文字の位置や、そこに指を移動させることすら意識する必要がなくなるだろう。文字をまったく考えなくなり、一度に単語全体が出てくるようになるかもしれない。