消費者金融業界で大手4社の一角を占めるアイフルに経営危機説が流れている。過払い金返還ラッシュに見舞われて経営が厳しいのは、どの消費者金融会社も同じだが、自己資本比率が最も低く、メガバンク傘下にも入っていないため、経営基盤は大手4社のなかでも弱い。当面の資金繰りに問題はないものの、先行きは予断を許さず、大手4社の再編劇にまで発展する可能性もある。
「今後5年分の経営計画を提出してもらいたい」――。さる11月、突然メインバンクである住友信託銀行から、こう通告されたアイフルは、あわてて経営計画の数値作成に追われた。
住友信託の懸念の裏には、ひっきりなしに流れているアイフル危機説がある。数週間前には「アイフルが民事再生法の適用を申請する」といううわさが流れた。いわゆる「ガセネタ」ではあったが、9月に業界中堅のクレディアが民事再生法適用の申請に踏み切った経緯もあり、取引金融機関は真偽の確認に大わらわとなった。
9月の中間決算で、住友信託はノンバンク向け融資の貸し倒れ引当金を300億円積み増した。この大半がアイフル向けと見られるが、「備えあれば憂いなし」とはいかない。アイフルに対する住友信託の融資残高は、単体で約945億円、グループ全体では2000億円弱にも上る(2007年9月末)からだ。
住友信託の実権を握る高橋温会長と福田吉孝・アイフル社長は10年来の長きにわたる「昵懇の仲」。両社は、共同出資で事業者向けローン会社「ビジネクスト」も立ち上げている。
付け加えれば1998年、破綻した日本長期信用銀行(現・新生銀行)と住友信託の合併話が出た折には、急落した住友信託株を福田社長が買い支えたといわれるなど、単なる銀行と融資先の関係を超えた親密ぶりは銀行業界ではつとに有名だ。
住友信託は苦慮している。アイフルを丸抱えするほどの経営体力はないが、さりとて、これまでの関係を考えれば、無下にもできない。
最近、住友信託はあおぞら銀行との提携を発表した。あおぞら銀はアイフルの準主力行。住友信託とあおぞら銀のアイフル向け融資残高は計1581億円(2007年9月末の単体ベース)で、全体の約3分の1を占める。
「あおぞら銀が逃げれば、住友信託の“防波堤”が決壊し、他の取引銀行からアイフル向け融資の肩代わり要請が殺到しかねない。提携の真意は、アイフル対策にあったのではないか」と大手銀行関係者は指摘する。