シリコンバレー発の新マネジメント手法「リーン・スタートアップ」が話題だ。もともとは、自らも起業経験を持つエリック・リース氏が、ITサービスで起業するための方法論として考案したものだが、現在では新製品やサービスを市場に導入したいと考える、あらゆる業界で取り入れられつつある。
2010年創業のリーン・スタートアップ・マシーンは、このリーン・スタートアップ方法論を3日間のワークショップを通じて参加者に叩き込んでくれる。これまで米国に限らず、世界20都市で35回以上のワークショップを主催してきた。2012年だけでも、年末までに50回のワークショップを予定しているという。
ワークショップでは、参加者らは数人ずつのチームに分かれ、、いくつものエクササイズを通じて実際に「MVP(minimum viable product、実用最小限の製品)」を2日以内に制作することを求められる。制作を通じて、「オフィスを飛び出せ」(外に出て、顧客との会話を通じて必要な製品やサービスが何かを学習する)や「ピボット」(簡単にいえば振り出しに戻るのに近い、大幅な変更のこと)といった、リーン・スタートアップ方法論の基本を学ぶことになる。
あらかじめ何を作成したいかというアイディアを持ち、複数人数で参加することもできれば、まっさらな状態で参加し、他の人々のアイディアや意見を聞きつつ、その場でチームをつくることもできる。チームは実際に外へ出て、人々に自分たちが考えた製品やサービスについての意見を聞き、アイディアを修正しつつ、完成品を目指していく。
ワークショップの参加費用は通常299ドルだが、学生割引や、早期購入割引がある。アメリカでは多くの起業セミナーが100ドル以下で受講できることを考えると、同セミナーは割高な印象だが、これは参加人数を50人程度に限定し、参加者一人ひとりの理解を徹底させているためだという。
またどのワークショップにも、実際の起業家など約20人がメンターとして参加しているのだが、彼らはなんと、全員がボランティア。同社のコンセプトに賛同、無給で指導に当たっているのである。
これまでにワークショップに参加した人数は1800人以上、参加者から450以上のスタートアップが実際に誕生しているという。
同社のワークショップ・コーディネーターであるレイ・ウー氏によれば、東京でも年末か来年年始に、ワークショップの開催を予定しているという。現在ウー氏は、リーン・スタートアップのコンセプトに賛同し、その考えを広め、実践する活動を推進している「リーンスタートアップジャパン」代表の和波俊久氏とともに、準備を進めている。
アジア太平洋地域でのリーン・スタートアップへの関心は非常に高まっており、ウー氏への取材時はちょうどシンガポールでのワークショップ開催中だった。中国でも開催を要望する声が強いという。
またリーン・スタートアップ・マシーンはこのほど、起業を目指す学生を対象に奨学金を提供することを明らかにした。今後開催する約200のワークショップの参加者(学生)を対象に、1ワークショップにつき2名に奨学金を出すという。奨学金は総額12万ドル程度となる見通しだ。
(岡 真由美/5時から作家塾(R))