父親ギテクも失敗した「台湾カステラ屋」とは?

 ミニョクの代わりに富裕層パク家の家庭教師を務めることになったギウは、全員失業中の家族が、パク家という最高の就職先にありつけるよう、ある“計画”を企てる。

「お前、いつも計画があるんだな」
「計画はどうなったのよ?」


 劇中では“計画”の二文字がたびたび繰り返される。そして、うまくいっていたかに見えたその”計画”は大きく揺らぐことになる。

 「人生は無計画がいい」。これは、ギウの計画が揺らぎ、まるで魔法が解けてお城から逃げ出したシンデレラ状態になったとき、子どもたちに向けて言った父親ギテクのセリフだ。

 いつもひょうひょうとしていたギテクが、子どもたちに本心を語った瞬間だった。ポン・ジュノ監督は、この映画の中でも、観客がいろんな観方ができるように様々な球(メッセージ)を繰り出してくる。その中からこのセリフをど真ん中でキャッチした人もいるだろう。

 ギテクは様々な事業に手を出しては失敗して、今の半地下暮らしだ。彼が失敗したという「台湾カステラ」の店は、2016年ごろに韓国で大流行して爆発的に店舗を増やしたものの、体に悪い添加物が入っていると報道されるや客足が一気に遠のき、結果、元・台湾カステラ店のオーナーという多くの失業者を出した、人々の記憶に新しい災いだ。ギテクだって、事業を始めるにあたっては、計画を練ったに違いないのだが、予測不可能な出来事で、人生はいとも簡単に計画変更を余儀なくされる。

映画『パラサイト』が教えてくれたのは、「頑張っても報われない」という人生の残酷さだったのかもしれないⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED